Dental Medicine Research
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原著
機械的刺激を負荷した培養骨芽細胞におけるNa+/Ca2+交換体の発現とF-アクチン線維の走行性に関する研究
坂井 信裕鈴木 恵子諸橋 富夫山田 庄司
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2010 年 30 巻 2 号 p. 117-123

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抄録

骨組織が生理的機能を維持するには, 様々な機械的刺激 (メカニカルストレス) が重要である. また細胞内Ca2+シグナルは細胞機能に必須のシグナル経路である. 本実験では, 3次元的な機械的刺激を負荷した骨芽細胞様細胞において, イオントランスポーターである1型Na+/Ca2+交換体 (NCX1) の発現と, メカノセンシティブに応答しCa2+を流入する伸展活性化 (SA) チャネルの細胞形態変化への関与について検討した. 骨芽細胞様細胞株 (MC3T3-E1 cell) を, ナイロンメッシュで支持したコラーゲンゲル中に播種し (6×105 cells/ml) , 10%FBS含有αMEM培地にて24時間の前培養を行った.その後, 機械的刺激を3日間負荷した. 伸展変形は10%, 断続的な伸展周期は1 Hz, 15分間, 1日3回とした. NCX1 mRNAの発現はRT-PCR法で解析した. 細胞形態は共焦点レーザー顕微鏡により観察した. また, SAチャネルの阻害薬であるガドリニウム (Gd3+) 10 μMを培養液中に添加し機械的刺激によるSAチャネル活性化への影響を調べた. NCX1のmRNA 発現は非伸展群と比較して伸展群において増加していた. 伸展群の細胞は紡錘形を呈し, 伸展方向に対し一定方向 (直角) に配列していた. また, F-アクチン繊維のローダミンファロイジン染色像は非常に強い蛍光強度を示していた. これらの細胞形態および細胞骨格の変化はGd3+添加により抑制された. 本実験の結果から, 骨芽細胞では機械的刺激によりNCX1を介するCa2+の流出入機構が活性化されること, さらにSAチャネル活性化によりF-アクチンの構造変化を引き起こし, 細胞形態を変化させることが示唆された.

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© 2010 昭和大学・昭和歯学会
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