昭和歯学会雑誌
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コラーゲンゲル内細胞に対する周期的外力負荷装置の開発
ラット頭蓋冠由来骨系細胞の増殖性の影響について
清水 仁美
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1991 年 11 巻 2 号 p. 231-241

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抄録

歯科矯正治療に際し, 骨に整形力を与える場合, あるいは矯正力によって歯を移動させる場合, 与えられる外力, すなわち機械的刺激は, 骨改造機転に対して, 何らかの影響を及ぼす重要な因子と考えられているが, その細胞レベルでの作用機構については不明な点が多い.そこで, これらの点を少しでも解明するために, 本研究ではコラーゲンゲルに包埋した骨系細胞に機械的外力を与え, その刺激に対する応答性を形態的あるいは機能的に研究するための実験モデルの開発を行った.まずコラーゲンゲルの支持体としてナイロンメッシュを使用することにより, ゲルを薄層化し, 機械的変形によるゲル内への栄養物質の浸透促進効果を最小限に抑えることができた.新生ウイスター系ラット頭蓋冠由来骨系細胞を10%FBSを含むEagle's MEMで培養した.その細胞の継代2代目を8×105ce11s/m1の割合で0.3%コラーゲンゾルに浮遊させ, 14×14mmのナイロンメッシュ内に浸透させた後, ゲル化し, ナイロンメッシュに支持された厚さ約1mmのコラーゲンゲルを作製した.細胞を包埋したコラーゲンゲルは, 伸展力反復負荷装置にセットし, 10%FBSを含むEagle's MEMにて培養した.コラーゲンゲルを1分間に60回のサイクルで10% (1.4mm) 伸展させることにより細胞を変形させる実験 (以下stretch群という) を行った.この周期的な変形を6時間間隔にて継続的に加えた.また対照として, 1分間に60回のサイクルで培地中を1.4mm水平移動するcyclic contro1群とゲルの移動も培地の撹拌もないstable contro1群を用いた.位相差顕微鏡による細胞の観察およびDNA量の測定を行い, 経時的に比較検討を行った・コラーゲンゲル内において骨系細胞は経時的に増殖し, 培養2日目の光顕所見およびDNA量において, stretch群は他のcontro1群より, 細胞数が有意に増加していることがわかった.今回開発した伸展力反復負荷装置を用いることにより, 生理的状態に近い3次元的な力を細胞に加えることができた.また, 本装置は, 細胞に対する機械的刺激を研究するモデルとして有用であることが示唆された。

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