昭和歯学会雑誌
Online ISSN : 2186-5396
Print ISSN : 0285-922X
ISSN-L : 0285-922X
齲蝕溶解剤CarisolvTMに関する基礎的研究
大島 任木下 潤一朗鈴木 信之木村 裕一松本 光吉
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 18 巻 4 号 p. 360-365

詳細
抄録

齲蝕象牙質を溶解すると報告されている齲蝕溶解剤CarisolvTMは, スウェーデンで開発され臨床応用が公認され実際に使用されている.今回, 我々はこのCarisolvTMの齲蝕象牙質除去能力を調べるため, 有機質溶解剤である次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)と比較し, 又, 更に無機質溶解剤であるRoot Canal Preparation Cream(RC-PrepTM)を併用した場合と比較する実験を行った.本研究では, 慢性齲蝕のある30本の新鮮ヒト抜去歯を用いた.CarisolvTMの使用法は, アミノ酸を主成分としたジェル溶液AとNaOClを主成分とした溶液Bを使用時に混合し, それを齲蝕象牙質に塗布し, 20-30秒後に付属の刃の付いていない専用のインスツルメントで除去するという操作を2回繰り返した.実験は2つの方法で行い, 実験1, 2とした.実験1ではNaOClとCarisolvTMの齲蝕溶解能力を比較する実験を行い, 実験2ではRC-PrepTMとCarisolvTMを交互に作用させ, RC-PrepTMを先に作用させる方法を(A), CarisolvTMを先に作用させる方法を(B)とした.齲蝕除去効果を2%アシッドレッドプロピレングリコール溶液を用いて実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した.実験1では, CarisolvTMがNaOClと比較してかなり高い効率で齲蝕象牙質を除去することが認められた.実験2では, (A)と(B)では相違は認められなかったが, CarisolvTM単独の場合と比較するとRC-PrepTMを併用した場合の方が, 窩洞表面が滑沢になっており, 除去効果が高いことを示唆する結果が得られた.これらの結果より, Carisolvの齲蝕象牙質の除去効果については確認出来たが, 齲蝕象牙質を完全に除去出来たか否かについては確認出来なかった.

著者関連情報
© 昭和歯学会
前の記事 次の記事
feedback
Top