1999 年 19 巻 1 号 p. 97-104
昭和大学歯科病院における口唇裂・口蓋裂患者において, 最初に萌出する永久歯は近年, 第一大臼歯から中切歯へと移行しており, それに伴い男児においては顎顔面形態に変化が起こり始めていることを本研究の第一報にて述べた.今回は, 口唇裂・口蓋裂患者を中切歯先行萌出型 (I型) と大臼歯先行萌出型 (M型) に2分し, I型児, M型児男女における各裂型の占める割合を調べた.さらに口唇裂・口蓋裂患者において, 6歳時から10歳時まで, 経年的に撮影された側面頭部X線規格写真 (セファロ) を男女別に2型に分類し, I型, M型の顎顔面形態の比較検討を行った.その結果, I型では男女とも片側性唇顎口蓋裂 (UCLP) が約半数を占めており, 以下単独口蓋裂 (ICP), 両側性唇顎口蓋裂 (BCLP) の順で多かったが, M型においては男女ともICPが全体の約4割を占め, 次いでUCLP (約1/4), 片側性唇顎裂, BCLPの順であった.男児の経年的 (6, 8, 10歳) セファロにおけるI型, M型の比較によると, 全顔面高を表すN-Me, 下顎骨長を表すGn-CdでM型はI型よりも大きく, 逆に下顎下縁平面に対する下顎中切歯の歯軸傾斜角を表すIMPA, 上下顎関係の代表値であるANBではI型がM型よりも大きいという共通の傾向がみられ, 男児M型において, より骨格性下顎前突症の傾向が強いことが示唆された.一方, 女児においてはこのよな傾向は認められなかった.以上の所見より, 第一報で6歳男児において認められたI型とM型の顎顔面形態の差異は8歳時, 10歳時の男児においても認められ, M型男児における骨格性下顎前突症の傾向が経年的に観察された.