昭和歯学会雑誌
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歯科治療にあたって注意すべき全身性疾患の基礎知識
足立 満
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2001 年 21 巻 1 号 p. 5-9

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抄録

臨床医学の上で歯科医療は局所を扱う専門分野であるが, 全身性疾患が歯科医療に大きく影響する場合があるため内科的疾患についても十分な配慮が必要である.全身性疾患のために歯科治療に障害をもたらす代表的な疾患には免疫力の低下する糖尿病, 血液疾患, ステロイド治療中の膠原病などの難治性疾患がある.出血傾向を伴う血液疾患, 肝硬変, アスピリン, ワーファリン治療患者は抜歯等の外科的手技において多量の出血をもたらす危険性がある.他方口腔内の病変が全身性疾患の部分病状である場合がある.アジソン病の黒色舌, 血小板減少症での口腔内出血, 糖尿病の合併症としての歯周病がその例である.歯科疾患が全身性疾患の原因, 増悪因子となる心内膜炎, 甲状腺機能充進症も注意すべき事項である.歯科治療には多くの金属を使用するため, 金属アレルギーによる皮膚粘膜疾患の発生には注意が必要である.薬剤アレルギーによる皮膚炎, 肝機能障害, 消化管の炎症や潰瘍は良く知られているが, 忘れてはならないものに気管支喘息患者において重篤な発作を引き起こすアスピリンに代表される非ステロイド性消炎鎮痛薬過敏喘息がある.本稿では歯科医療と全身性疾患で特に注目される糖尿病, 金属アレルギーおよびアスピリン喘息について述べる.

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