昭和歯学会雑誌
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ヒト歯肉部のメラニン色素沈着に関する電顕的研究
越智 幸一刀禰 達也鴨井 美子松本 光吉
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1983 年 3 巻 1 号 p. 27-31

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抄録

ヒトの歯肉におけるmelanin pigmentを光顕ならびに透過型電子顕微鏡を用いて, 色素の沈着部位, melanosome伝達機序, clearcel1の形態, 発生, 機能などについて, 形態学的に検討する目的で本実験を行った.観察材料として, 肉眼的に着色のない健康な歯肉を対照とし, 軽度の着色のある症例, 強度の着色のある症例の歯肉の一部を用いた.今回の観察所見を整理して, 以下のような知見を得た.光顕所見では, 茶褐色から黒色のmelanin pigment が basal-cell-layerに限局して観察された.電顕所見では, basal-cell-layer 部の melanocyte は, 種々なmelanosomeを分泌し, basal-cel1-layerのcellにmelanosomeを送り込み, cytoplasm内のmelanosomeは1imiting membrane の clearなものから unclear なものまであった.nucleusのinvagination, deformation, chromatin agrigationなどの変化も観察され, とくに肉眼的に強いmelaninpigmentの症例では, basal-cell-layerよりspinous cell方向に配列しているce11にまで, melanosomeを送り込んでいる所見も一部観察された.また, melanosomeのcelltransmissionについて検討したところ, Massonのcytocrine activity説を支持する所見を得た.clear cellについては, 今後, さらに検討を加える必要を感じた.また, 臨床的には, melanin pigmentの除去に際しては, basa1-ce11-1ayerまで除去すれぽよいことを知った.

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