抄録
ラツト尾部の熱侵害性刺激に対する悼尾反射 (tail flick renex) を用いて, 末梢Aδ求心性神経線維の選択的刺激による鎮痛効果および機序について検討した.痛みの指標として, 悼尾反射に関与する内側尾伸筋 (M.extensor caudae medialis) の筋放電量を用いた.腓骨小頭近傍における神経線維の分布を検索したとき, 腓骨小頭より5mm内側点近傍を針電気刺激するとAδ神経線維の活動のみが観察された.この部位を閾値の3倍までの強さで刺激することによって, Aδ神経線維を選択的に刺激することが可能であった.以上の条件で刺激したときに見られるAδ神経線維の活動電位の振幅は, 5Hz以上の刺激頻度で減少した.このため, Aδ神経線維の選択的刺激を行うにあたりAδ神経線維の活動電位の振幅に減少が見られない2Hzを用いた.2Hzで30分間Aδ神経線維を選択的に刺激したとき, 筋放電量は刺激期間中減少し, 刺激中止後も後抑制効果が観察された.この鎮痛効果は, 内因性モルフィン様物質 (オピオイド) の拮抗剤であるナロキソンによって拮抗されなかった.この結果は, 熱侵害性刺激と同じ皮膚分節に属する後肢でのAδ神経線維の選択的刺激によって発現した鎮痛効果がオピオイドを介さない系によってもたらされることを示唆する.