日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
アトピー性皮膚炎における血清IgEと末梢血Fcεレセプター陽性細胞の動態―気道アトピー素因との関係について―
檜垣 祐子
著者情報
ジャーナル 認証あり

1990 年 100 巻 4 号 p. 477-

詳細
抄録

アトピー性皮膚炎(AD)における血清IgE値およびIgE産生誘導に関与すると考えられる末梢血FcεR2+細胞につき気道アトピーの既往または家族歴の有無により,Pure ADとCombined ADに分けて検討した.IgEはAsthma combined AD,Rhinitis combined AD,Pure ADの順に高値を示し,IgE高値(>250IU/ml)の症例の割合はそれぞれ95.8%,72%,63.2%であり,合併する気道アトピー素因ことに喘息の関与が大きいと思われた.ADの重症度と血清IgE値はPure ADおよびRhinitis combined ADでは相関はなかったのに対し,Asthma combined ADでは有意な相関をみた.FcεR2+細胞数はAD全体でIgEとのあいだに弱いながら正の相関を示し,ADにおいてもIgE産生に関与していることが示唆された.またFcεR2+細胞はCombined ADで有意な増加を示したが,重症度との間に相関はなかった.これに対しPure ADではFcεR2+細胞の増加は認めなかった.これらの結果からADにおけるIgEおよびFcεR2+細胞の増加は,ADそのものではなく合併する気道アトピー素因,ことに喘息を反映するものと思われた.しかしながらAsthma combined ADではIgEがADの重症度と相関することから,このグループではIgEが皮疹に対してもなんらかの関与をしている可能性は否定できない.Ⅰ型アレルギーに関しては合併する気道アトピー素因の関与が少なくないことから今後ADの病因を検討する上で,少なくともPure ADとAsthma combined ADとは分けて検討すべきであると考えた.

著者関連情報
© 1990 日本皮膚科学会
次の記事
feedback
Top