日本皮膚科学会雑誌
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100 巻, 4 号
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  • 檜垣 祐子
    1990 年 100 巻 4 号 p. 477-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)における血清IgE値およびIgE産生誘導に関与すると考えられる末梢血FcεR2+細胞につき気道アトピーの既往または家族歴の有無により,Pure ADとCombined ADに分けて検討した.IgEはAsthma combined AD,Rhinitis combined AD,Pure ADの順に高値を示し,IgE高値(>250IU/ml)の症例の割合はそれぞれ95.8%,72%,63.2%であり,合併する気道アトピー素因ことに喘息の関与が大きいと思われた.ADの重症度と血清IgE値はPure ADおよびRhinitis combined ADでは相関はなかったのに対し,Asthma combined ADでは有意な相関をみた.FcεR2+細胞数はAD全体でIgEとのあいだに弱いながら正の相関を示し,ADにおいてもIgE産生に関与していることが示唆された.またFcεR2+細胞はCombined ADで有意な増加を示したが,重症度との間に相関はなかった.これに対しPure ADではFcεR2+細胞の増加は認めなかった.これらの結果からADにおけるIgEおよびFcεR2+細胞の増加は,ADそのものではなく合併する気道アトピー素因,ことに喘息を反映するものと思われた.しかしながらAsthma combined ADではIgEがADの重症度と相関することから,このグループではIgEが皮疹に対してもなんらかの関与をしている可能性は否定できない.Ⅰ型アレルギーに関しては合併する気道アトピー素因の関与が少なくないことから今後ADの病因を検討する上で,少なくともPure ADとAsthma combined ADとは分けて検討すべきであると考えた.
  • 向井 秀樹, 西岡 清, 上村 仁夫, 伊藤 篤, 野口 俊彦, 藤本 進, 西山 茂夫, 秋山 茂
    1990 年 100 巻 4 号 p. 487-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    成人型アトピー性皮膚炎(AD)患者68例の病巣部より分離したブドウ球菌(ブ菌)を,ホルマリンで不活化させた菌液を用いてADの治療を試みた.68症例中36例が有効以上の治療効果をえ,有効率は52.9%であった.治療経過より治療1年未満の再発率は高く,少なくとも1~2年間の治療が必要であった.著効を示した7症例は,治療中止後10ヵ月から2年を経た現在もなお殆ど内服薬や外用剤の使用もなしに軽快状態を維持している.副作用は14例(20.6%)にみられたが,投与中止あるいは投与量の半減により速やかに症状は消失した.使用菌種から表皮ブ菌より黄色ブ菌使用例の有効率が高く,経過中に変化する使用菌種のパターンも黄色→表皮ブ菌移行例に有効群が多かった.臨床像の改善により,皮表細菌数は明らかに減少した.したがって,従来の種々の療法で改善しない成人型AD症例において,本治療は試みるべき有用な方法と我々は考えている.
  • 向井 秀樹, 西岡 清, 野口 俊彦, 藤本 進, 西山 茂夫, 秋山 茂
    1990 年 100 巻 4 号 p. 495-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    細菌ワクチン注射の作用機序を明らかにするために,臨床効果と細胞性免疫および細菌特異IgG,IgE抗体価の推移を測定した.有効群では無効群に比し,末梢血中のCD8陽性細胞数が有意に上昇しており,したがってCD4/CD8比も有意に低下していた.経時的にCD4/CD8比をみると,有効群では3ヵ月以内より低下傾向を認め,6ヵ月以上経つと無効群に比し有意に低下していた.細菌特異IgG抗体価は,有効群が臨床効果に遅れて抗体価が上昇するのに対し,無効群ではほとんど抗体価の変動がみられなかった.有効群のIgG抗体価は,ブドウ球菌(ブ菌)がもつProtein Aの有無に拘らず使用菌種以外のブ菌抗体価も同様に上昇する傾向が認められた.一方IgE抗体価は両群とも有意な変動はみられなかった.したがって,本治療法の作用機序は細胞性免疫の強化,IgG抗体産生により皮表細菌数が減少し,皮膚刺激性の低下および細菌による直接的ないし間接的なヒスタミン遊離作用を抑制することで,アトピー性皮膚炎の皮疹や瘙痒感が改善するものと考えた.
  • 飯島 茂子, 馬場 徹, 上野 賢一
    1990 年 100 巻 4 号 p. 503-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    開院以来約11年間に,組織学的に悪性リンパ腫による皮膚病変と診断された31例につき検討した.①院内全悪性リンパ腫の特異疹の発生頻度は17.7%,男女比2:1,平均年齢男58.0±15.0歳,女44.2±18.6歳であった.②初発病巣別にみると,皮膚はHDを含めた悪性リンパ腫の中では5.8%,HDを除く悪性リンパ腫の中では6.9%を占めた.③31例を皮膚を初発とするA群10例,A群以外で皮膚を主な反応の場とするB群7例,皮膚以外を主な反応の場として皮膚を侵すC群14例に分けて検討した.特異なATLL慢性型の1例を除けば,皮膚病変のみの期間については群間に有意な差を認めた.④臨床的・組織学的なA群・B群におけるC群との違いは,表皮向性が見られること,T細胞性リンパ腫が優位であること,広範な皮疹を示すこと,1症例当たりの皮疹形態が多彩であること,であった.⑤A群は特異的な局面形成により,B群・C群より区別され,P-MAが高頻度であることにより,B群とは区別された.⑥B細胞性リンパ腫には表皮向性(表皮内浸潤)・真皮内表皮向性は1例もなかった.真皮内表皮向性はT細胞性リンパ腫のみでなく,null cell型リンパ腫やHDにもみられた.これらより,T cell-表皮-A群との密接な関係が確認された.⑦皮疹の自覚症状・自然消褪には群間差はなく,約20~50%に認められた.
  • 牧野 嘉幸
    1990 年 100 巻 4 号 p. 517-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    1kWキセノンランプを光源とする回析格子型モノクロメーターに,波長,照射時間,半値波長幅の自動制御と,1秒毎の照射光量を積算するコントロールユニットを開発して持続し,これを用いて64名の健康成人の波長別の最小紅斑量(minimal erythema dose:MED)を求めた.波長別MEDは季節,判定時間により統計上有意差をみとめたが,性,半値波長幅による違いはみられなかった.さらに,色素性乾皮症2例.多形日光疹2例,日光性類細網症1例,種痘様水疱症2例,薬剤による光線過敏症2例など臨床的に光線過敏症と診断された計19例について過敏波長の特徴描出を試みた.
  • 山本 裕子, 藤澤 重樹, 森嶋 隆文, 森岡 貞雄, 飯沼 和三
    1990 年 100 巻 4 号 p. 527-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    伴性劣性外胚葉形成不全症の19歳男の典型例の詳細を記すとともに,結婚をひかえていた24歳姉と母親の保因者診断を行なった.本症の明らかな症状を欠く保因者診断法として,1)歯牙形成不全,2)皮膚紋理のdissociationの存在,3)発汗減少,4)斑状の無汗部位の存在,5)Blaschko線の存在,6)汗孔間距離の拡大の6項目の検査が重要と思われた.母親はこの6項目を満たし,保因者と診断しえた.姉は何れの項目も欠いており,Lyonの仮設に基づいて確率計算すると,その発現率は1.5625%であり,姉は保因者でないと判断した.
  • 正橋 寿子, 高橋 伸也, 真家 興隆
    1990 年 100 巻 4 号 p. 533-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    Pilomatrix carcinomaの本邦第2例を報告するとともに1980年以降の報告16例について考察をおこなった.Pilomatricomaが女性に多く,年齢は30歳未満が多いのにひきかえ,pilomatrix carcinomaでは男女比が3対1で男性に多く,40歳以上が75%をしめていた.再発が16例中6例にみられ,内2例に肺転移があった.病理組織学的類似性ゆえに初発腫瘍がpilomatricomaとされ,再発後にretrospectiveに本症と診断された例がみられたことから,再発がなければ見逃されている場合もあるといえよう.Pilomatrix carcinomaをpilomatricomaと対比しながら疫学的および組織学的に検討した.
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