日本皮膚科学会雑誌
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マウス実験的皮膚黄色ブドウ球菌感染症におけるフィブロネクチンの観察
秋山 尚範
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1990 年 100 巻 6 号 p. 657-

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抄録
皮膚黄色ブドウ球菌(黄色ブ菌)感染症の発症初期におけるフィブロネクチン(以下FN)の動態および黄色ブ菌の皮膚接着におけるFNの役割りを解明することが目的である.シクロホスファミド投与マウスにヒト由来黄色ブ菌を皮内注射してマウス実験的皮膚黄色ブ菌感染症を作製した.経時的に生検し,FNの動態および黄色ブ菌とのかかわりを蛍光抗体法,免疫電顕法により観察した.蛍光抗体法におけるFNの分布は,菌接種2分後より真皮・皮筋筋層部にFNの微細顆粒状の沈着が認められ,時間とともに加速度的に局所での増加が観察された.免疫電顕法による観察では,菌接種12時間後より黄色ブ菌の細胞壁の最外部にFNが全周に接着する像が認められた.菌接種24時間後ではFNの黄色ブ菌への接着には2通りの接着像が見られた.一つは黄色ブ菌周囲へのFNの接着が菌表面の全周には認められず,黄色ブ菌がフィブリンおよび組織と接着していると考えられる部位を中心にFNが接着しており,黄色ブ菌が,可溶性FNを介してフィブリンや組織と接着していると考えられる像である.黄色ブ菌がフィブリンや組織と接着していると思われる部位へ黄色ブ菌表面にあるFNレセプターが移動し,接着をより強固なものにしていると考えられた.もう一つは,FNの黄色ブ菌周辺への接着が全周に見られた像のうち,やや変性していると思われる黄色ブ菌へFNがほぼ均一に接着している像は,可溶性FNが黄色ブ菌に接着し,フィブリンや組織への黄色ブ菌の接着を阻害している像と考えられた.このようにFNは,皮膚黄色ブ菌感染症の発症初期において感染の成立および感染の防御という両面で調整している可能性を考えさせた.
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© 1990 日本皮膚科学会
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