日本皮膚科学会雑誌
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100 巻, 6 号
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  • 秋山 尚範
    1990 年 100 巻 6 号 p. 657-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    皮膚黄色ブドウ球菌(黄色ブ菌)感染症の発症初期におけるフィブロネクチン(以下FN)の動態および黄色ブ菌の皮膚接着におけるFNの役割りを解明することが目的である.シクロホスファミド投与マウスにヒト由来黄色ブ菌を皮内注射してマウス実験的皮膚黄色ブ菌感染症を作製した.経時的に生検し,FNの動態および黄色ブ菌とのかかわりを蛍光抗体法,免疫電顕法により観察した.蛍光抗体法におけるFNの分布は,菌接種2分後より真皮・皮筋筋層部にFNの微細顆粒状の沈着が認められ,時間とともに加速度的に局所での増加が観察された.免疫電顕法による観察では,菌接種12時間後より黄色ブ菌の細胞壁の最外部にFNが全周に接着する像が認められた.菌接種24時間後ではFNの黄色ブ菌への接着には2通りの接着像が見られた.一つは黄色ブ菌周囲へのFNの接着が菌表面の全周には認められず,黄色ブ菌がフィブリンおよび組織と接着していると考えられる部位を中心にFNが接着しており,黄色ブ菌が,可溶性FNを介してフィブリンや組織と接着していると考えられる像である.黄色ブ菌がフィブリンや組織と接着していると思われる部位へ黄色ブ菌表面にあるFNレセプターが移動し,接着をより強固なものにしていると考えられた.もう一つは,FNの黄色ブ菌周辺への接着が全周に見られた像のうち,やや変性していると思われる黄色ブ菌へFNがほぼ均一に接着している像は,可溶性FNが黄色ブ菌に接着し,フィブリンや組織への黄色ブ菌の接着を阻害している像と考えられた.このようにFNは,皮膚黄色ブ菌感染症の発症初期において感染の成立および感染の防御という両面で調整している可能性を考えさせた.
  • 石黒 和守, 三好 憲雄, 中西 和夫, 福田 優, 上田 恵一
    1990 年 100 巻 6 号 p. 669-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    集学的治療法の一治療法の開発を目指し,腫瘍に対しX線照射のヘマトポルフィリンオリゴマー(HpO)およびカフェインによる増感効果について検討した.ヒト悪性黒色腫培養細胞(G-361)を用いて,HpOを投与後,X線を照射し,さらにカフェインを添加してDNA損傷度を定量化して比較検討した.G-361のX線によるDNA損傷度は照射量の増加とともに直線的に増加し,HpO投与により,その損傷度は増大した.また,励起一重項酸素の捕捉剤であるアジ化ナトリウム(NaN3)を投与したところ,NaN3は濃度依存性にHpO投与後のX線によるDNA損傷の効果を抑制した.このことからHpOの増感反応には,X線によるHpOの励起エネルギー移動による励起一重項酸素の生成が示唆された.従って,HpOはX線増感剤になる可能性が認められた.さらにカフェイン投与によりDNA修復の阻害が認められ,X線照射単独群よりもHpO投与群の方がその効果が大きいことが示された.次に,C3Hマウスに自然発生した腫瘍にHpOを局注後,X線を照射した結果,X線照射単独群よりもHpO併用群の方が腫瘍の生長は抑制された.組織学的変化の定量化のためカラー画像解析システムを用いて経時的に検索した結果,X線照射単独群よりもHpO併用群の方が,急速に壊死部位の面積比が増大した.照射直後において,X線単独群よりもHpO併用群の方が出血部位の面積比が著明に増加した.従って,HpO併用群の重要な標的の一つとして血管系が示唆された.電子顕微鏡的には,照射直後において,X線照射単独群よりもHpO併用群の方が腫瘍細胞の著明な変性を認めた.また,血管系に関しては,X線単独群では充血像を認めただけであったのに対して,HpO併用群では血管内皮細胞の空胞変性を認め,血管の損傷が顕著であった.Bromodeoxyuridine(BrdU)を用いて経時的に単回標識を施行し,標識率の変化について検討した結果,X線照射単独群よりもHpO併用群の方が有意に標識率が低下した.HpO併用群とHpOとカフェインの併用群の間には,標識率の有意の差は認められなかったが,HpOとカフェイン併用群の方が比較的早期に標識率が低下する傾向が見られた.また分裂率の変化について経時的に検討した結果,標識率と同様の結果を得たが,分裂率はばらつきが大きく,標識率の方が有用と考えられた.さらにDNA損傷度について経時的に検索した結果,照射直後において,X線単独群よりもHpO併用群の方がDNA損傷度が増大した.照射後は次第にどの群においてもDNA損傷は修復されたが,HpOとカフェイン併用群の修復がもっとも遅延していた.以上,in vivoの実験においてin vitro同様,X線照射に対するHpOの増感効果が認められた.カフェインの増感効果に関しては,DNA損傷度の面からは認められたが,その他の検索においては認められなかった.HpOは従来のX線増感剤に比較し副作用が少なく,しかも局所に投与すればほとんど無害であると考えられる.また,カフェインもほぼ無害と考えられ,HpOとカフェインを併用局注してX線照射を施行すれば極めて効果的に癌を治療でき,本療法は将来性ある癌の集学的治療法であると結論された.
  • 影下 登志郎, 中村 尚, 平井 俊二, 荒尾 龍喜
    1990 年 100 巻 6 号 p. 689-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫におけるdisialogangliosideの局在を4種類のモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的に検討した.原発巣ではGD3,acetyl GD3,GD2,GD2+GD3,の順で発現する細胞が多く,転移巣ではGD3,GD2,GD2+GD3,acetyl GD3の順で発現する細胞が多かった.陽性細胞の割合は症例によって異なりheterogeneityを示すことが特徴であり,免疫組織学的診断には異なる抗原を認識する抗体の組み合わせが重要である.NMとALMを比較検討すると,gangliosideの発現は明らかにALMで低下しており,両者の生物学的特性の違いを考慮するときわめて興味深い.
  • 菊池 かな子, 五十嵐 敦之, 石橋 康正, 猪熊 茂子, 竹原 和彦
    1990 年 100 巻 6 号 p. 695-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    外来通院中の比較的軽症と考えられるPSS患者において,呼吸機能に関する問診システムを考案し,呼吸機能検査,胸部X線所見との比較検討を行った.各問診項目の得点を合計した自覚症状のスコアは呼吸機能をよく反映しており,さらに自覚症状のスコアが3以上の例は肺病変に関する十分な注意が必要な症例と考えられた.各問診項目の得点,特に階段の昇降はこれらの呼吸機能と相関することが明らかとなった.また,動悸,息切れに関する問診内容は胸部X線の肺線維症診断項目の多くと関連が認められた.強皮症患者を外来にて観察する際には,我々の考案した問診システムが有用であると考えられる.
  • 塚田 篤子, 古谷 達孝
    1990 年 100 巻 6 号 p. 701-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    PSS患者の口唇粘膜に関する組織学的研究は極めて少ない.筆者らはPSS患者25症例,すなわちA型16例,D型9例に下口唇粘膜生検を施行し,結合織の硬化性病変及び小唾液腺内における炎症性病変について検索し下記の結果を得た.1)結合織の硬化性病変はPSS25症例中23例(92%)に,病型的にA型では16例中14例(87.5%),D型では9例中全例(100%)に認められた.硬化性病変はa)小唾液腺より離れた部位及びb)小唾液腺小葉周囲に認められ,またc)型としてa),b)の両部位に認められるものがあるが,A型ではa)型は75%,b)型は87.5%,c)型は87.5%,D型ではa)型は100%,b)型は100%,c)型は100%でD型により高頻度かつ高度の硬化性病変が認められた(p<0.01).2)罹病期間と硬化性病変との関係を罹病期間10年以内と10年以上とに分類し観察した.A型では罹病期間が10年以内の症例においては硬化性病変は比較的軽度,即ち全10例中G02例,G14例,G2 4例,G30例,10年以上の症例では全6例中G02例,G11例,G21例,G32例であり,これに反しD型では罹病期間の長短に関わらず即ち10年以内の症例では全5例中G23例,G32例,10年以上の症例は全4例中G11例,G22例,G31例でA型に比しD型により高度な硬化性病変が認められた(p<0.01).3)小唾液腺の炎症性病変中H3及びH4所見はPSS25例中8例(32%)に認められ,病型的にA型では16例中6例(37.5%)即ちH34例,H42例,D型では9例中2例(22%)即ちH3,H4とも各1例で,統計学的にみてA,D両型間では有意差は認められなかった(p<0.01).4)罹病期間と小唾液腺腺体における炎症性病変の関係では,罹病期間が10年以内のPSS症例では全15例中H34例,H43例,病型的にみるとA型では10例中H33例,H42例,D型では5例中H3及びH4各1例,一方10年以上の症例では全10例中1例,即ちA型のH31例のみで,小唾液腺における炎症性病変はA,D病型を問わず罹病期間10年以内の症例においてより高頻度に認められた(p<0.05).これを要するに結合織の硬化性病変はD型において罹病期間の長短にかかわらず顕者な硬化性病変が認められ,小唾液腺炎はA,D両病型間には有意な差は認められず,罹病期間が長期化するにつれ,小唾液腺炎は稀薄化する傾向が認められた.本症PSSには時にSjogren's syndrome(以下SjS)が併発するが,これとの関係は後日に待ちたい.
  • 飯島 正文, 佐々木 聴
    1990 年 100 巻 6 号 p. 711-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    皮膚Mycobacterium (M.) kansasii感染症の1例を報告した.患者は41歳男性,約1ヵ月前より生じた左示指背の有痛性浮腫性紅斑局面を主訴に来院.組織学的には真皮深層の好中球浸潤を伴う壊死病巣に一致して抗酸性桿菌が証明され,組織片より光発色性第Ⅰ群非定型抗酸菌が培養された.自験株は42℃での発育(+),硝酸塩還元試験(+),カタラーゼ(+)等の性状から細菌学的にM. Kansasiiと同定された.我々は皮膚病変より菌が培養・同定された皮膚M. Kansasii感染症の18例(本邦4例,外国14例)を文献的に蒐集し,本症の病型分類について考察した.本症は当初皮膚限局性慢性肉芽腫型が多く報告されたが,次第に全身播種性急性化膿性炎型が増加し,また皮膚限局性化膿性炎型の報告も散見されるようになってきている.呼吸器感染症としての肺M. kansasii感染症が欧米では従来より一般的であり,本邦でも近年急増してきている現状を考えると,種々の免疫不全宿主に合併し,皮膚“日和見”感染症としての性格が強い化膿性炎型の本症が今後も増加するものと予想された.
  • 新井 春枝, 伊藤 篤, 太田 幸宏
    1990 年 100 巻 6 号 p. 721-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    44歳女性のMCTDにみられたミオパチーの1例を報告した.発熱とともに全身の筋肉の腫脹硬直と疼痛,筋酵素の上昇が急激に起こり,約3週間で軽快,筋生検で類上皮細胞肉芽腫像が観察された.また局所的な筋肉の腫脹と疼痛発作がたびたびみられた.治療には非ステロイド系消炎剤が有効であった.MCTDとミオパチー,サルコイドーシスとの関係について,若干の考察を加えた.
  • 須賀 康, 山田 裕道, 高森 建二
    1990 年 100 巻 6 号 p. 729-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    近年,肝,骨格筋,胎盤など各種臓器に非ライゾーム系酵素のひとつであるhigh molecular weight proteaseの存在が報告されている.我々はウイスター系ラット皮膚より,硫安分画,Phenyl Sepharose CL-4B疎水性カラムクロマトグラフィー,HPLCゲル濾過を用いて本酵素の分離精製を試み,HPLCゲル濾過上およびアクリルアミドゲル電気泳動上,単一なタンパクバンドとして分離精製することに成功した.本酵素は156倍にまで精製され,その回収率は27.3%であった.また,ゲル濾過にて判定した分子量は約75万,SDS存在下の電気泳動により分子量約2.0万から3.5万の間に4~5本のバンドが観察され,本酵素は数個のサブユニットから形成されていることが判明した.
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