日本皮膚科学会雑誌
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皮膚Mycobacterium kansasii感染症―左示指背のみに病変の認められた1例の症例報告と文献的考察―
飯島 正文佐々木 聴
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1990 年 100 巻 6 号 p. 711-

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抄録

皮膚Mycobacterium (M.) kansasii感染症の1例を報告した.患者は41歳男性,約1ヵ月前より生じた左示指背の有痛性浮腫性紅斑局面を主訴に来院.組織学的には真皮深層の好中球浸潤を伴う壊死病巣に一致して抗酸性桿菌が証明され,組織片より光発色性第Ⅰ群非定型抗酸菌が培養された.自験株は42℃での発育(+),硝酸塩還元試験(+),カタラーゼ(+)等の性状から細菌学的にM. Kansasiiと同定された.我々は皮膚病変より菌が培養・同定された皮膚M. Kansasii感染症の18例(本邦4例,外国14例)を文献的に蒐集し,本症の病型分類について考察した.本症は当初皮膚限局性慢性肉芽腫型が多く報告されたが,次第に全身播種性急性化膿性炎型が増加し,また皮膚限局性化膿性炎型の報告も散見されるようになってきている.呼吸器感染症としての肺M. kansasii感染症が欧米では従来より一般的であり,本邦でも近年急増してきている現状を考えると,種々の免疫不全宿主に合併し,皮膚“日和見”感染症としての性格が強い化膿性炎型の本症が今後も増加するものと予想された.

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© 1990 日本皮膚科学会
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