日本皮膚科学会雑誌
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壊死性血管炎による広汎な四肢壊死をきたした全身性強皮症
佐々木 哲雄高橋 一夫家本 亥二郎金 秀澤中嶋 弘
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1992 年 102 巻 12 号 p. 1543-

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抄録

壊死性血管炎を伴い急激に広汎な四肢壊死をきたした全身性強皮症(PSS)の1例を報告した.症例は52歳時Raynaud現象で発症し,54歳の初診時すでに体幹にも特徴的な皮膚硬化を認め,肺・食道病変も伴っていた.55歳時から足底難治性潰瘍が持続し,その後示指末節壊死,第2趾末節吸収をきたしていた.検査では,抗トポイソメラーゼⅠ抗体と抗SS-A抗体が陽性であった.血清IgAの低下,血清補体価の低下,抗DNA抗体軽度陽性などの異常がそれぞれ異なる時期に一過性にみられたが,全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチ,Sjogren症候群などの重複を示唆するその他の所見はなかった.組織学的には54歳時と61歳時の前腕皮膚生検でも真皮の膠原線維の増生膨化と血管周囲性細胞浸潤に加えて,細動脈の内膜肥厚と内腔の狭窄化がみられていた.治療としては55歳時から対症的にプレドニゾロン内服が開始され,57歳時から約4年間5mg/日の維持投与が行われていた.61歳時急激に広汎な四肢壊死をきたし,検査で血清補体低下,血中免疫複合体陽性,足趾皮膚生検組織でフィブリノイド変性を伴う壊死性血管炎(結節性動脈周囲炎(PN)型)の像を認め,免疫組織学的に血管壁に免疫グロブリンと補体の沈着がみられた.発症1ヵ月後,膝上で両下肢切断術を余儀なくされ,切断肢の組織でも皮膚・筋肉内に多数のPN型血管炎が認められた.術後2ヵ月で心肺不全で死亡した.本例のようにPN型の血管炎を呈するPSSはこれまでもまれながら報告されているが,予後は不良で死亡例が多い.今後,このような症例の臨床的特徴を明らかにし,早期に線溶療法や抗凝固療法など適切な治療を行うことが肝要と思われる.

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© 1992 日本皮膚科学会
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