日本皮膚科学会雑誌
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二次元ゲル電気泳動による上皮性皮膚腫瘍のケラチン分析
吉川 賢一片方 陽太郎近藤 慈夫
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1993 年 103 巻 11 号 p. 1397-

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抄録

二次元ゲル電気泳動とimmunoblottingにより,10種類の上皮性皮膚腫瘍に発現しているケラチン蛋白を分析した.重層上皮型ケラチン(K5,K14)と過増殖関連ケラチン(K6,K16およびK17)はほぼ全ての腫瘍に発現していた.さらに角化型(分化型)ケラチン(CK1,K10,K11)と単層上皮型ケラチン(K8,K19)はそれぞれの腫瘍に応じて認められた.つまり角化型ケラチンは脂漏性角化症,ボーエン病,日光角化症,扁平上皮癌では主成分として,脂腺癌では少量,ケラトアカントーマとエクリン汗孔癌では僅かに認められるか欠損していた.一方,単層上皮型ケラチンは,悪性澄明細胞汗腺腫および毛母腫,基底細胞癌および脂腺癌の一部の症例に検出された.検索した腫瘍の内で毛母腫のみに毛ケラチン(trichocytic keratin)が認められた.上皮性皮膚腫瘍におけるケラチン蛋白の発現は多様であるが、それぞれの腫瘍の生化学的特徴それに分化や発生母地を反映しているものと考えられた.

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© 1993 日本皮膚科学会
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