日本皮膚科学会雑誌
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103 巻, 11 号
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  • 吉川 賢一, 片方 陽太郎, 近藤 慈夫
    1993 年 103 巻 11 号 p. 1397-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    二次元ゲル電気泳動とimmunoblottingにより,10種類の上皮性皮膚腫瘍に発現しているケラチン蛋白を分析した.重層上皮型ケラチン(K5,K14)と過増殖関連ケラチン(K6,K16およびK17)はほぼ全ての腫瘍に発現していた.さらに角化型(分化型)ケラチン(CK1,K10,K11)と単層上皮型ケラチン(K8,K19)はそれぞれの腫瘍に応じて認められた.つまり角化型ケラチンは脂漏性角化症,ボーエン病,日光角化症,扁平上皮癌では主成分として,脂腺癌では少量,ケラトアカントーマとエクリン汗孔癌では僅かに認められるか欠損していた.一方,単層上皮型ケラチンは,悪性澄明細胞汗腺腫および毛母腫,基底細胞癌および脂腺癌の一部の症例に検出された.検索した腫瘍の内で毛母腫のみに毛ケラチン(trichocytic keratin)が認められた.上皮性皮膚腫瘍におけるケラチン蛋白の発現は多様であるが、それぞれの腫瘍の生化学的特徴それに分化や発生母地を反映しているものと考えられた.
  • 野村 佳弘
    1993 年 103 巻 11 号 p. 1407-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    種々のステージの皮膚悪性黒色腫39例を対象として,原発巣の細胞増殖活性と組織学的予後因子との関係を検討した.増殖活性の指標としてbromodeoxyuridine(BrdU)標識率,Ki-67陽性率およびDNA polymerase α(Pol α)陽性率を用いた.対照として母斑細胞母斑14例も検索した.その結果,3種の指標の平均値はいずれも黒色腫と母斑の間で著しい差があり,黒色腫は母斑と比べて30~50倍高い増殖活性を示した.黒色腫では,腫瘍の浸潤レベルとBrdU標識率,Ki-67陽性率およびPol α陽性率との間に密接な関係があり,後2者の値はレベルⅡ・Ⅲ群よりもレベルⅣ,Ⅴ群において有意に高かった.腫瘍の厚さとBrdU標識率,Ki-67陽性率およびPol α陽性率との間にも密接な関係があり,後2者の値は厚さ1.5mm未満の群および1.5~4.0mmの群より4mmを超える群において有意に高かった.また,腫瘍の厚さとBrdU標識率,Ki-67陽性率およびPol α陽性率との間には著明な正の相関が認められた.3種の指標の値はいずれも所属リンパ節転移の無い群よりもそれを有する群において高かった.さらに,3種の指標について黒色腫例を低値群,中等値群,および高値群に分け,Kaplan-Meier生存率曲線を求めて比較した結果,Ki-67陽性率ならびにPol α陽性率の低値群の生存率は対応する高値群の生存率より有意に高いことが示された.以上の結果から,Ki-67陽性率とPol α陽性率は黒色腫の予後の決定に有用なマーカーであると思われた.
  • 金森 幸男, 立原 利江子, 中村 進一, 飯田 和美
    1993 年 103 巻 11 号 p. 1415-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    G361,HMV-1およびMewoの3種類のヒトメラノーマ細胞樹立株を用い,40℃および43℃,30分間の温熱処理が,DNA,RNAおよび蛋白合成に与える影響を検討した.この温熱処理では,3種類のcell linesすべてにおいて,cell viabilityの低下を認めなかった.G361は,40℃の温熱処理でRNA合成のみ促進されたが,DNA合成と蛋白合成は抑制された.43℃では,DNA,RNAおよび蛋白合成のすべてが抑制され,その程度は,蛋白合成,DNA合成,RNA合成の順であった.G361では,40℃で抑制の大きい合成は,43℃でも抑制が大きい結果となった.HMV-1は,40℃で蛋白合成のみ抑制された.43℃では,DNA,RNAおよび蛋白合成のすべてが,ほぼ同程度に抑制された.Mewoは,40℃でDNA合成のみ抑制されたが,43℃では,DNA,RNAおよび蛋白合成のすべてが抑制され,その程度は,RNA合成,DNA合成,蛋白合成の順であった.DNA合成とRNA合成を比較した場合,4O℃ではDNA合成がRNA合成より大きく抑制されたが,43℃ではRNA合成の抑制がDNA合成の抑制より大きい結果となり,40℃で抑制が大きい場合でも43℃では,必ずしも抑制が大きくはならなかった.Melanoma cellに対する40℃および43℃,30分間の温熱処理による効果は,温度,cell line,およびDNA,RNA,蛋白合成のいずれを指標とするかによって異なることが明らかとなった.
  • 秋山 尚範, 下江 敬生, 荒田 次郎
    1993 年 103 巻 11 号 p. 1421-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    免疫抑制マウスの背部皮膚にヒトfurunculosis由来のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を皮内注射して作成した感染モデルを用いた.各種抗菌薬を単独または併用投与し,菌接種3,5,7日目に感染病巣を全摘した.感染病巣中の菌数,分離S. aureusの最小発育阻止濃度(MIC)およびefficiency of plating(EOP)を測定した.1)組織中の菌量の変動よりみて,最も抗菌力が優れていたのはtosufloxacin(TFLX)(MIC=0.06μg/ml),次いでofloxacin(OFLX)(MIC=1μg/ml)であった.皮膚科領域のMRSA感染症には,起炎菌に対するMIC が保たれていればニューキノロン剤が第一選択と思われる.2)耐性化が最も顕著であったのはceftizoxime(CZX)次いでcefotiam(CTM)であった.これらはpenicillin-binding protein(PBP)-2'の誘導能が高いと考えられている薬剤である.3)併用療法の検討ではcefmetazole(CMZ)+fosfomycin(FOM),imipenem(IPM)+CTM,TFLX+IPMは併用効果が認められたが,OFLX+minocycline(MINO)は桔抗作用を示した.IPM+CTMでCTM単独投与時に出現したCTM耐性は同様に出現したが,IPM単独投与時に出現したIPM耐性菌は減少した.TFLX+IPMでTFLX単独投与時に出現したTFLX耐性はIPMとの併用で認められなくなった.以上より,皮膚科領域の中等度耐性MRSA感染症の抗菌薬療法としては,現時点では抗菌力を高める点および耐性化防止の観点よりIPM+CTM,IPM+ニューロキノロン剤併用が有用ではないかと思われた.
  • 多田 讓治, 戸井 洋一郎, 秋山 尚範, 下江 敬生, 荒田 次郎
    1993 年 103 巻 11 号 p. 1429-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    顔面全体に高度な皮疹を有する患者64例(男性28例,女性36例)において,顔面皮疹の性状,血中好酸球数,血清IgE値,ヤケヒョウヒダニ特異IgE抗体,抗核抗体,アトピー性皮膚炎発症から顔面皮疹の増悪までの期間,増悪に関与した因子,光線過敏性,金属過敏性,顔面皮疹からの黄色ブドウ球菌の検出,眼科的合併症について検討した.顔面皮疹には,一部にでも苔癬化がみられるタイプと,顔面のどの部位にも苔癬化がみられず■漫性の発赤腫脹のみの2つのタイプが観察された.顔面皮診の高度な患者は同時に重症型であり,発症から10年以上経たものが多く,さらに,好酸球数も多く,血清IgE値およびヤケヒョウヒダニ特異IgE抗体も著明に高いものが多かった.抗核抗体も低倍ではあるが正常人に比し陽性率が高く,金属過敏性(ニッケル,クロム),光線過敏性でも比較的高い陽性率であった.顔面皮疹の増悪には,外用剤(ステロイドおよび非ステロイド剤),化粧品,シャンプー・石鹸などの日用品,ウイルス感染,ステロイド剤外用の中止など,様々なものが確認された.顔面病変から培養しえた患者全員から黄色ブドウ球菌が検出され,黄色ブドウ球菌も増悪因子と考えられた.白内障・網膜剥離も約3割に合併しており,白内障がより高率であった.以上の結果より,顔面皮疹の増悪には,多種類の要因が関与していると思われ,顔面皮疹の増悪以前に,すなわち,アトピー性皮膚炎が重症化する以前に,個々の症例において,きめ細かい検査・診断・治療が重要であると考えられる.
  • 大倉 光裕, 碇 優子, 馬場 タカ子, 溝口 昌子, 野村 眞智子, 高桑 俊文
    1993 年 103 巻 11 号 p. 1437-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    Apoptosisはnecrosisとは違った細胞死であり,近年programmed cell deathでの細胞死として注目されている.急性単球性白血病(AMoL)患者(49歳男性)に化学療法(エノシタビン,ダウノルビシン,メルカプトプリン,プレドニゾロン)施行中に浸潤がある紅斑ないし紅色丘疹が四肢,躯幹に出現し,病理学的にAMoLの特異疹であった.皮疹の電顕的検索で腫瘍細胞に細胞質・核・核クロマチンの凝集などのapoptosisに特徴的所見が認められた.apoptosisは様々な要因で生ずるが,経過や皮疹の酵素抗体法の所見などから自験例では治療の影響により生じた可能性が考えられた.
  • 豊田 雅彦, 丸山 友裕, 諸橋 正昭, 高屋 憲一
    1993 年 103 巻 11 号 p. 1445-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎の皮疹部における肥満細胞の形態学的特徴について電顕的に検討し,難治性の症例と非難治性の症例との比較検討を行った.難治症例,非難治症例ともに,皮疹部の肥満細胞数は正常皮膚の約8倍に増加していた.また,活性化された肥満細胞に特徴的な,特異顆粒内のvesicleやcytoplasmic vacuoleの増加が認められた.難治例では全例で肥満細胞が互いに,時に線維芽細胞やリンパ球と共にclusterを形成する像がしばしば認められ,この所見は無疹部においても観察された.Cluster内の肥満細胞は多数の絨毛突起を長く伸ばし,隣接する細胞の突起と複雑に絡み合っていた.一方,非難治例の皮疹部ではclusterの形成はほとんど認められなかった.以上の結果より,肥満細胞のcluster形成は,アトピー性皮膚炎の難治化と何らかの関連を有することが示唆された.
  • 1993 年 103 巻 11 号 p. 1451-
    発行日: 1993年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
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