免疫抑制マウスの背部皮膚にヒトfurunculosis由来のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を皮内注射して作成した感染モデルを用いた.各種抗菌薬を単独または併用投与し,菌接種3,5,7日目に感染病巣を全摘した.感染病巣中の菌数,分離S. aureusの最小発育阻止濃度(MIC)およびefficiency of plating(EOP)を測定した.1)組織中の菌量の変動よりみて,最も抗菌力が優れていたのはtosufloxacin(TFLX)(MIC=0.06μg/ml),次いでofloxacin(OFLX)(MIC=1μg/ml)であった.皮膚科領域のMRSA感染症には,起炎菌に対するMIC が保たれていればニューキノロン剤が第一選択と思われる.2)耐性化が最も顕著であったのはceftizoxime(CZX)次いでcefotiam(CTM)であった.これらはpenicillin-binding protein(PBP)-2'の誘導能が高いと考えられている薬剤である.3)併用療法の検討ではcefmetazole(CMZ)+fosfomycin(FOM),imipenem(IPM)+CTM,TFLX+IPMは併用効果が認められたが,OFLX+minocycline(MINO)は桔抗作用を示した.IPM+CTMでCTM単独投与時に出現したCTM耐性は同様に出現したが,IPM単独投与時に出現したIPM耐性菌は減少した.TFLX+IPMでTFLX単独投与時に出現したTFLX耐性はIPMとの併用で認められなくなった.以上より,皮膚科領域の中等度耐性MRSA感染症の抗菌薬療法としては,現時点では抗菌力を高める点および耐性化防止の観点よりIPM+CTM,IPM+ニューロキノロン剤併用が有用ではないかと思われた.
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