抄録
強皮症の症状出現に先行して抗Scl-70(topoisomerase I)抗体陽性が証明されたSLE-PSSおよびwidespread DLE-PSS overlap症候群の各症例を経験したので報告した.症例1:35歳,男性.22歳時にSLEと診断.32歳時に抗核抗体のスクリーニングテストにて抗Scl-70抗体陽性が判明.3年後に前腕の皮膚硬化が明らかになったためSLE-PSS overlap症候群と診断した.症例2:36歳,女性.27歳時に顔面,体幹等に萎縮性紅斑が出現.その後,経過観察中に手指および前腕の皮膚硬化が現われ徐々に進行したため36歳時にwidespread DLE-PSS overlap症候群と診断した.この時点で初診時の凍結保存血清を調べたところ,抗Scl-70抗体陽性であったことが判明した.抗Scl-70抗体は強皮症における早期診断的意義が期待されてるが,本症例はこれを確認するものと考えられる.また,強皮症以外の膠原病の患者において抗Scl-70抗体が陽性の場合には,強皮症のoverlapを予想して注意深く経過観察をする必要があると思われる.