末梢血好酸球増多,顔面の腫脹及び紅斑,躯幹の瘙痒が先行し,数ヵ月の経過で四肢末端を除く全身に急速な皮膚硬化の進行を来たした非定型強皮症の1例を報告した.症例は77歳,男.有機溶媒曝露,骨髄移植,L-トリプトファン摂取,美容外科手術などの既往はなく,特に誘因なく上記症状が出現した.皮膚硬化出現早期の紅斑部の生検では真皮全層に及ぶびまん性炎症細胞浸潤及び基底層の液状変性を認めたが、皮膚硬化の進行にともない細胞浸潤は減少し,かわって真皮膠原線維束の増生が明瞭となった.炎症細胞浸潤の主体はリンパ球様細胞,組織球様細胞であり,少数の好酸球を混じていた.筋膜は肥厚し,真皮と同様の細胞浸潤を認めたか,筋組織には異常は認めなかった.経過中レイノー現象は認めず,抗核抗体は陰性であった.全身精査により感染症,悪性腫瘍の存在は否定的であった.また皮膚硬化の進行の過程で,食道蠕動運動の軽度低下,涙液分泌の減少などの出現をみたが,肺,心臓,腎臓等には病変を認めなかった.プレドニゾロン30mg/日の内服により好酸球数は正常化したが,皮膚硬化はほぼ不変で,また骨突出部に潰瘍形成がみられた.自験例では過激な運動後に生じる好酸球性筋膜炎やL-トリプトファン摂取により生じる好酸球増多一筋痛症候群との類似性が考慮されたが,そのいずれにも合致せず,極めて稀な病態であると考えられた.
抄録全体を表示