日本皮膚科学会雑誌
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角層の保水機能と皮表および角質細胞間脂質の加齢による変化
冨樫 きょう子
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1993 年 103 巻 9 号 p. 1165-

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抄録

角層の保水機能と皮表および角質細胞間脂質の加齢による変化を明らかにするために,20歳代の男性17例(若齢群)と60歳代の男性10例(高齢群)の下腿伸側を被験部位とし,高周波伝導度測定装置による角層のconductance valueの測定と水分負荷試験を行った.さらに同部位よりカップ法を用いて皮表および角質細胞間脂質を採取し,high-performance thin-layer chromatographyにより脂質の組成を分析した.角層のconductance valueは水分負荷の前後ですべて高齢群が若齢群に比べて低値であった.単位面積あたりの皮表および角質細胞間脂質の総重量は高齢群と若齢群の間に統計的に有意な差を認めなかったか,高齢群は若齢群に比べて皮脂由来の脂質の重量が少なく,表皮由来の脂質(角質細胞間脂質)の重量が多い傾向にあった.セラミドの総重量では高齢群と若齢群に明らかな差はなかったが,セラミド分画では高齢群は若齢群に比べてセラミド1の割合が少なく,セミラミド4/5の割合が多かった.それぞれの群において,水分負荷前の角層水分量と皮表および角質細胞間脂質の関係を検討した結果,角層水分量は脂質の総重量や皮脂量,角質細胞間脂質量,各々の脂質分画の重量とは相関しなかった.しかし,角層水分量は若齢群と高齢群を合わせるとセラミド分画のうちセラミド1の割合と正の相関を,セラミド4/5の割合と負の相関を示した.これらの成績から,セラミドの組成が角層の保水機能に重要な役割を果たすことが示唆された.高齢者の保水機能の低下はセラミドの組成の変化によるものであり,皮脂量の低下とは直接関係しないと推察された.

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© 1993 日本皮膚科学会
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