眼瞼黄色腫91例の血清cholesterol, triglyceride, HDL-cholesterol,各種apolipoproteinにつき,検査し次の結果を得た.1)血清cholesterol値は年齢のマッチした他皮膚疾患群,住民検診群より有意に高値を示し,HDL-cholesterol値は低値を示す.各種apolipoproteinではアポBで他皮膚疾患群および正常健康人群より有意に高値を示した.しかしアポAIでは他皮膚疾患群に対しては有意に低値を示したが,正常健康人群とは有意差を認めなかった.また症例の大多数(41%)はcholesterol値が220mg/dlから260mg/dlの範囲にあった.2)眼瞼黄色腫の症例において,血清cholesterol値とアポ蛋白の関係は,アポBに高い相関を認め,HDL-cholesterolとは負の相関を認めたものの,アポAとは相関を認めなかった.3)眼瞼黄色腫を血清cholesterol値により亜群に分け検討した.a)正cholesterol群(220mg/dl未満)では,正常健康人群と比較してHDL-cholesterolの低下とアポBの上昇,他皮膚疾患群と比較してHDL-cholesterol,アポAの低下を認めた.また軽度高cholesterol群(220mg/dl以上260mg/dl未満)では他皮膚疾患群と比較してアポBの上昇,アポAの低下を認めた,正常健康人群との比較では,アポBの上昇を認め,アポAもむしろ高値を示した.b)高cholesterol群(260mg/dl以上)では家族性高コレステロール血症と診断された群とそれ以外の群に分け検討したが,家族性高コレステロール血症群は非家族性高コレステロール群に比べ,アポBの有意な上昇を認めたが,それ以外のアポ蛋白,HDL-cholesterolには有意差をみつけられなかった.以上の結果から,眼瞼黄色腫全体としてその根底に脂質代謝異常が存在し,コレステロールの上昇とそれに伴うアポBの増加を主体とするが,コレステロール値が正常な症例ほどアポA,HDL-cholesterolの低下が強調されることを示した.
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