日本皮膚科学会雑誌
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Esculinのmelanogenesis抑性作用
片桐 崇行横山 浩治小磯 一郎松上 道雄中野 博行
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1994 年 104 巻 11 号 p. 1367-

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抄録

クマリン配糖体の1つであるesculinに,B16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑性作用が認められた.esculinは細胞増殖に影響を与えない濃度でメラニン産生を可逆的に抑性し,その力価は約10μMであった.HPLCを用いたメラニン定量の結果,esculinは細胞当たりのユーメラニン生成を特異的に抑性し,フェオメラニンには影響を与えなかった.さらに,esculinは細胞のDNA合成・タンパク合成活性にも影響しないことが示された.esculinのチロシナーゼ粗酵素に対する試験管内での活性阻害能はIC50=10mMと,培養系に比較して著しく高濃度であったため,直接的なチロシナーゼ阻害以外の作用機序が想定された.そこで,チロシナーゼのアイソザイム分析並びにノーザンハイプリダイゼーションを行ったところ,esculin濃度に依存したT3,T1アイソザイム活性の低下とチロシナーゼmRNA発現量の減少が認められた.以上の実験結果から,esculinの主要な作用機序として,チロシナーゼ遺伝子の転写レベルでの抑性によるチロシナーゼタンパクの生合成阻害が強く示唆された.

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© 1994 日本皮膚科学会
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