菌状息肉症(MF)23例,Sezary症候群(SS)2例の皮疹部を用い,各種モノクローナル抗体(Leu-4抗体,Leu-2a抗体,Leu-3a抗体)で染色後,浸潤細胞のNCI(Nuclear contour index)およびヘルパー/サプレッサーT細胞比(CD4/CD8比)を測定し,対照皮膚疾患群(類乾癬,扁平苔癬,アトピー性皮膚炎,慢性湿疹等)のそれらと比較検討した.その結果,①MFにおいてCD4/CD8比は紅斑期(平均2.87),浸潤期(平均5.70),腫瘍期(平均9.18)と病期の進行に伴い増加し、SSではMFの腫瘍期とほぼ同様(平均9.04)の高値を示した.また,②対照とした皮膚疾患群におけるCD4/CD8比は平均2.04とMFの紅斑期よりも有意に低い値を示した.以上よりこの光顕的,免疫組織学的方法は比較的簡便な測定法にもかかわらず,MF,SSの診断・病期を知る上で有力な方法の一つであることが示された.次にMF,SSにおける各々の浸潤細胞のNCIを免疫電顕法にて測定し比較検討した.その結果,③ヘルパーT細胞即ちCD4陽性即ちCD4陽性細胞のNCIの方が,T細胞全体のマーカーであるCD3陽性細胞のNCIに比較して各病期において高値を示した.また,④MFの紅斑期における浸潤細胞のCD4陽性細胞中NCI6.5以上の細胞の占める比率は平均47.64%でCD3陽性細胞中NCI6.5以上の細胞の占める比率は平均43.98%であった.また,⑤対照皮膚疾患群におけるCD4陽性細胞のNICは平均4.93±0.08であり,就中NCI6.5以上の細胞の占める比率は平均12.10%であり,いずれもMF,SSの方が対照とした皮膚疾患群に比べ高値を示した.以上より,⑥腫瘍細胞自体であるヘルパーT細胞即ちCD4陽性細胞のNCI測定やNCI6.5以上を占める細胞比率(%)の測定はMF,SSを早期に診断し,進行度を知り得る上でCD3陽性細胞のそれらを測定する以上に有力な指標となるものと考えられた.
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