日本皮膚科学会雑誌
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トラネキサム酸の培養ヒトメラノサイトの増殖,メラニン産生に及ぼす影響
堀越 貴志江口 弘晃小野寺 英夫
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1994 年 104 巻 5 号 p. 641-

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抄録

肝斑や炎症後色素沈着等の後天性色素沈着性疾患に対し,トラネキシム酸の内服が有効であると報告されている.培養ヒトメラノサイトをトラネキサム酸存在下で培養し,トラネキサム酸のメラノサイトの増殖,チロジナーゼの活性,メラニン産生に与える影響について検討した.トラネキサム酸1,5,10,50μg/ml存在下でメラノサイトの3H-thymidine3H-TdRの取り込み量はコントロール値に比べ有意に低下した.この取り込み抑制効果はトラネキサム酸1μg/mlの存在下で最も強く約50%減少した.トラネキサム酸0.1~1.μg/ml濃度では3H-TdRの取り込み量は変化しなかった.トラネキサム酸は0.5~50μg/ml存在下で,チロジナーゼ活性は有意差はないが増加する傾向が認められた.メラニン量には変化が見られなかった.14C-thiouracil(14C-TU)の取り込みは濃度依存性に増加した.14C-TUの取り込みの結果を見るかぎりトラネキサム酸はメラニン産生系に促進的に働くことが示された.今回の実験結果は,トラネキサム酸は,メラノサイトの増殖を抑制し,その結果色素沈着の軽減に働くという可能性を示唆した.しかし,トラネキサム酸のメラニン合成系に対する効果は,逆にメラニン合成系を促進する結果であった.メラニン合成糸に対する影響を検討するには,チロジナーゼ活性,メラニン量の測定,14C-TUの取り込み等のアッセイ系に加えさらに精度の高いアッセイ系を用いる必要があることが示唆された.さらに今後トラネキサム酸のメラノサイトに対する直接的な作用のみならず,角化細胞,あるいは他の細胞の線溶系等を介したメラノサイトへの間接的作用を検討する必要性が示唆された.

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© 1994 日本皮膚科学会
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