伝染性膿痂疹122例の皮膚病変部,右鼻腔前庭,右外耳道入口部よりStaphylococcus aureasの検出を初診時と可能なかぎり治療後に行った.分離S. aureasについてコアグラーゼ型測定,oxacillin(MPIPC)の最小発育阻止濃度(MIC)の測定を行った.MPIPCのMIC=4μg/ml≦のS. aureauをメチシリン耐性S. aureas(MRSA)とした.伝染性膿痂疹をアトピー性皮膚炎合併33例(AD+群)と非合併89例(AD-群)に分けて比較した.1)初診時検出菌の皮膚病変部のコアグラーゼ型別はAD+,-群ともⅤ型,Ⅰ型が多かった.アトピー性皮膚炎に発生した伝染性膿痂疹は湿疹病変部のS. aureasが原因ではなく,別に接種された伝染性膿痂疹を発症しうるS. aureasが原因であると考えられた.2)初診時検出菌の右鼻腔前庭と皮膚病変部のコアグラーゼ型の一致率はAD+群で17/33例(52%),AD-群で30/89(34%)であった.伝染性膿痂疹の感染経路として鼻腔前庭よりのautogenous infectionの重要性はいうまでもないがexogenous infectionの重要性について再認識した.3)MRSAの検出率はAD+,-群で差がない.初診時検出菌のMRSA検出率は皮膚病変部13/122例(11%),右鼻腔前庭12/66例(18%),右外耳道入口部4/28例(14%)であった.伝染性膿痂疹ではMRSAの検出率は現在でも少ない.4)治療終了時に皮膚病変部,右鼻腔前庭,右外耳道入口部のいずれか1ヵ所以上にS. aureusが残存する率はAD+群で7/10例(70%),AD-群で15/37例(41%)であった.治療後外来症例でも皮膚病変部,鼻腔前庭でMRSAに菌交代する症例が確認された.また皮膚病変部のS. aureusが鼻腔前庭へ波及し再感染源となりうる症例が存在する可能性が示唆された.
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