日本皮膚科学会雑誌
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悪性黒色腫と色素性母斑・類症のホルマリン固定パラフィン包埋未染標本の蛍光法的所見―同一切片のHMB-45免疫染色との比較研究―
森嶋 智津子森嶋 隆文
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1996 年 106 巻 2 号 p. 119-

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抄録

本研究の目的は蛍光性腫瘍細胞の細胞型とHMB-45染色性との相関を検討し,悪性黒色腫では病型別,色素性母斑・類症では疾患別に未染色標本の蛍光法的特徴を明らかにすることである.被験症例はmelanoticな黒色腫原発巣22例,amelanoticな黒色腫原発巣あるいは転移巣8例,色素性母斑38例,dysplastic nevus18例,Spitz母斑10例で,得られた結果は以下の通りである.1)悪性黒色腫では円形細胞以外の4型の黒色腫細胞がHMB-45染色陽性を示した.melanoticな原発例で蛍光法的にもHMB-45染色との観点からも特徴的所見は表皮内病変にあり,いずれの病型でも真皮内病変で蛍光を発し,HMB-45染色陽性の腫瘍巣は紡錘形細胞巣であった.amelanoticな黒色腫例でも蛍光性黒色腫細胞はHMB-45陽性であった.2)色素性母斑・類症ではdysplastic nevusは蛍光法的所見とHMB-45染色所見がほぽ一致し,Spitz母斑や色素性母斑では蛍光性母斑細胞はHMB-45陰性であった.以上の結果から、未染標本の蛍光法はmelanoticやamelanoticな黒色腫のメラニン産生能の証明法として,また黒色腫と良性色素性腫瘍の鑑別診断法として簡便かつ有用であることがHMB-45染色との観点から実証された.また,蛍光法と同一切片のHMB-45染色所見を組み合わせることにより色素性腫瘍の診断精度が向上するものと考えられた.

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© 1996 日本皮膚科学会
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