日本皮膚科学会雑誌
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糖尿病マウスに作製した皮膚潰瘍に対する精製白糖・ポビドンヨードの創傷治癒促進効果:特に病理組織学的検討を中心に
石 重明瀧本 玲子坪井 良治小川 秀興
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1996 年 106 巻 4 号 p. 403-

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抄録

糖尿病マウス(db/db)と正常家兎の全層皮膚欠損創モデルを用いて,精製白糖・ポピドンヨード製剤群,白糖を含む基剤群,無処置群の創傷治癒効果を比較検討した.糖尿病マウス(C57BL/KsJ db/db,8週齢)の背部皮膚中央に,直径6mmの全層皮膚欠損創を2個作製し,開放創として毎日1回,5日間薬剤を塗布し、8日目に組織を採取した.正常家兎(2.5kg)は耳介内側に同じ直径の全層皮膚欠損創をそれぞれ4個作製し,術後1回薬剤を塗布して閉鎖創とし,7日目に組織を採取した.創傷治癒の評価は組織標本を光学顕微鏡で観察し,a)再上皮化率(%),b)肉芽組織面積(mm2),c)血管数について定量的に評価した.その結果,糖尿病マウスでは精製白糖・ポピドンヨード製剤群は有意に肉芽組織と血管数を増加させた.白糖を含む基剤群では血管数がわずかに増加したが肉芽組織の量に変化はなかった.正常家兎を用いた家験系では精製白糖・ポピドンヨード製剤群は無処置群に比較し,再上皮化率,肉芽組織面積,血管数のいずれも有意に増加させた.白糖を含む基剤群では精製白糖・ポピドンヨード製剤群と無処置群の中間的な値を示した.今回の実験では精製白糖・ポビドンヨードが通常の皮膚潰瘍だけではなく,糖尿病の皮膚潰瘍にも有効であることが判明し,ポビドンヨードは,殺菌・消毒作用だけではなく,単独ないしは白糖との相互作用により,創傷治癒も促進させる可能性があることが示唆された.

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© 1996 日本皮膚科学会
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