アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)患者の末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells;PBMC)培養系において,抗アレルギー剤であるazelastine hydrochloride(Aze),emedastine difumarate(Eme),epinastine hydrochloride(Epi)の影響をdexamethasone(Dex)と比較検討した.その結果,Azeは10-5Mにおいてhouse dust mites(HDM)抗原およびconcanavalin(con)A刺激によるPBMCの増殖反応を有意に抑制し,その程度はDex10-7Mと同程度であった.また,Erne,Epiにも弱いながら抑制効果が認められた.AD患者PBMCは健常人に比しinterferon(IFN)-γの産生能が低下していたが,Emeはこれらの産生を増加する傾向がみられ,逆に、Azeは抑制的に作用した.一方,AD患者PBMCのinterleukin(IL)-10およびIL-6,IL-8産生はHDM刺激時において健常人に比し高値を示した.これらIL-10産生をAzeは有意に抑制した.IL-6産生に対してはEpiに抑制作用が認められたが,IL-8産生に対しては影響しなかった.単球/マクロファージ由来と考えられるIL-1β産生に対しては、AzeおよびEpiに抑制作用が認められた.なお,比較に用いたDexは増殖反応および全てのサイトカイン産生を抑制した.以上のことから,Azeは抗原刺激による活性化リンパ球およびサイトカイン産生を強く抑制し,さらに単球に対しても影響することが示唆された.一方,EmeはIFN-γ産生を促進し,AD患者の低下したTh1細胞の反応を活性化する可能性が示唆された.EpiはIL-6およびIL-1β産生を抑制したことより,炎症症状の惹起を調節している可能性が示唆された.
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