両鼠径部リンパ節腫脹を主訴に受診した邦人のKaposi肉腫の1例を報告した.患者は52歳男性で異性および同性間性的接触経路の感染による後天性免疫不全症候群(AIDS)で受療中であった.リンパ節生検にてKaposi肉腫と診断した.放射線療法にてリンパ節腫脹は改善したが経過中に皮疹が亀頭から陰茎全体,陰嚢に広がり,尿閉を来した.Kaposi肉腫と診断し化学療法を施行したが,間質性肺炎にて永眠した.リンパ節,陰嚢の生検標本からPCR法にてhuman herpesvirus8のDNA断片を検出した.剖検にてKaposi肉腫の所見は陰茎,陰嚢,下腹部,大腿の皮膚に認められた.初発部位である鼠径リンパ節にはKaposi肉腫の所見は認められなかった.内臓病変は骨髄に顕微鏡的に認められたのみであった.