筆者らは直接鏡検が陰性でも61歳以上の健常人においては,60歳以下の健常人より高率に舌からCandida albicansが分離されることを報告し,本菌が分離されることは宿主の軽度の易感染性を示す鋭敏な指標になると結論した.本研究では60歳以下の皮膚感染症患者について検討した.対象は基礎疾患(糖尿病,膠原病,悪性腫瘍,アトピー性皮膚炎など)がなく,ステロイド剤や抗生剤を内服していない60歳以下の皮膚感染症患者267例である.培地としてchloramphenicolを加えたサブロー・ブドウ糖寒天平板培地を用い,滅菌綿棒で舌を擦過し,培地に塗抹し培養した.なお全例直接鏡検が陰性であることを確認した.舌からのC. albicansの分離率はカンジダ症のうち,乳児カンジダ症を除く病型では10/18と高率で,さらに症例数は少ないがTrichophyton rubrumによるケルスス禿瘡や白癬性毛瘡(3/4)が高値で,両疾患は日和見感染症の要素があると考えた.しかしながら,乳児カンジダ症(2/13),T. mentagrophytesによる白癬(3/22),癜風(2/18),伝染性膿痂疹(1/11),尋常性疣贅(1/26),その他の菌種による白癬(0/12)は皮膚感染症に罹患していない60歳以下の健常人(16/162)と差がなく,患者集団に易感染性の傾向がないと考えた.一方,深在性膿皮症(8/26),単純性疱疹(5/17),T. rubrumによる足および生毛部白癬(19/67),帯状疱疹(7/33)が20~30%台で中間に位置すると結論した.
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