1998 年 108 巻 11 号 p. 1459-
66歳,女性.約1年前よりの全趾爪甲の混濁を主訴に受診.KOH鏡検では,茶褐色の太い不規則な菌糸を認め,サブローブドウ糖寒天培地による培養でAspergillus sydowiiが分離された.A. sydowiiによる爪真菌症は海外では知られているものの,われわれが調べ得た限りでは,これまで本邦での報告はない.Aspergillus属などによるnon-dermatophytic onychomycosis(NDO)は,臨床症状のみでは爪白癬と鑑別困難であり,グリセオフルビンが無効である.そのため長期にわたる抗真菌剤の外用,内服にても軽快傾向の見られない治療抵抗性の爪真菌症では,NDOによるものを疑い,治療法の再検討の必要がある.その問題点,診断および治療につき考察を加え報告した.