日本皮膚科学会雑誌
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線維芽細胞を包埋培養したコラーゲンゲルの収縮に影響を及ぼす諸因子の解析
尾下 宜民李 英蘭坪井 良治
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1998 年 108 巻 3 号 p. 217-

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抄録

創傷治癒過程における創収縮の機序を検討する目的で,ヒト線維芽細胞を包埋培養したコラーゲンゲルの収縮に対する諸因子の影響を解析した.方法は線維芽細胞1×105cells/mlをコラーゲンゲル(最終濃度0.21%)に添加して12時間培養し,線維芽細胞がゲル内で十分伸展した後ゲルを浮遊させ,各種試薬を添加してさらに培養し,生じたゲル収縮の程度を表面積を計算することにより算出した.その結果,1.0%牛胎児血清の添加により生ずるゲル収縮は6時間後より48時間以上継続して認められた.この収縮はcytochalacin Dを添加することにより抑制されたが,H-7,genisteinは影響を与えなかった.またサイトカインの中ではtransforming growth factor (TGF)-β,plateletderived growth factor (PDGF),endothelin (ET)-1にゲル収縮作用がみられた.さらに,PDGFによるゲル収縮はTumor necrosis factor (TNF)-αを添加することにより促進した.次にケラチノサイトや線維芽細胞の培養上清中のゲル収縮促進因子を検討したところ,ケラチノサイトの培養上清にのみゲル収縮作用が認められた.この作用がET拮抗剤により抑制されたことからケラチノサイトから分泌されたET-1がゲル収縮を引き起こしたと考えられた.以上の実験結果から,線維芽細胞を包埋培養した時に認められるコラーゲンゲルの収縮は種々の要因により規定されていることが判明した.特に再上皮化の過程でケラチノサイトから分泌されるET-1は肉芽組織の収縮,すなわち創収縮に深く関与していることが示唆された.

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© 1998 日本皮膚科学会
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