日本皮膚科学会雑誌
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Acral Lentiginous Melanoma in situのDermatoscope所見について―足底色素性母斑との鑑別・病理組織像との対比―
川端 康浩帆足 俊彦大原 國章玉置 邦彦
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1999 年 109 巻 1 号 p. 11-

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抄録

Dermatosconeを使用し,日本人に多い末端黒子型悪性黒色腫と足底の色素性母斑との鑑別を試みた.足底の後天性色素性母斑のDermatoscope所見を過去の報告と比較して再検討してみると,過去の報告例(Akasu5型分類)と自験例とにそのパターンにも頻度にも大きな違いはなく,いずれも皮溝と皮丘とに密接に関わった非常に規則的な線状のパターンで構成されていた.皮溝に沿った線状の色素沈着は病理組織学的に,皮溝に対応した表皮突起のメラニン色素,母斑細胞の胞巣,角層へのメラニン色素のcasting offに対応し,皮丘上の点状色素沈着は汗腺開口部付近の母斑細胞の胞巣ないしメラニン色素の沈着に対応していた.つまり,足底の後天性色素性母斑のDermatoscope所見における規則的な線のパターンは母斑細胞やメラニン色素の表皮内における規則的な分布によって形成されるものだと考えた.それに対して,Acral lentiginous melanoma in situでは,ほとんどの線のパターンは形成せず,皮溝・皮丘に無関係なびまん性色素沈着ないし皮溝よりも皮丘に強いびまん色素沈着で,全体的に色調のむらが非常に強く,色素沈着のみられない部分には相対的に色素脱失をきたしているかのようにみえた.これらを色素性母斑の規則的な線のパターンに対して,ALMの無秩序な面のパターンと表現した.組織学的には,表皮内に異型メラノサイトが不規則に分布しており,色素性母斑のように皮溝に対応した表皮突起や皮丘部の汗孔周囲に腫瘍細胞が限局するということはなかった.また,腫瘍局面内におけるDermatoscope所見の違いは表皮内における腫瘍細胞の密度の違いによるものであることがわかった.そして,これらの秩序のない不規則な腫瘍細胞の分布によりALM in situの非常に不規則な面のパターンは形成されるものと考えた.Dermatoscope所見で5型分類から逸脱したパターンを呈するものをALM in situと完全に鑑別することは困難で,5型分類から逸脱するパターン後天性色素性母斑は切除して組織学的に検討すべきであると考えた.

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© 1999 日本皮膚科学会
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