日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
糖尿病性壊疽5例の病態と治療経過
関東 裕美栗川 幸子小関 光美深澤 大伊藤 正俊
著者情報
ジャーナル 認証あり

1999 年 109 巻 5 号 p. 751-

詳細
抄録

糖尿病性特異病変による壊疽では,neuropathyがその成因に最も密接に関与しており欧米ではneuropathic ulcerと命名され,通常は足の動脈には閉塞性病変を伴わない.一方,糖尿病に血管閉塞性病変arteriosclerotic occlusion(ASO)が合併して生じる潰瘍は,ischemic ulcerと呼ばれている.もちろんこの両者間には両病変が混在するmixed typeがある.我国では糖尿病患者に合併する下肢の壊疽性病変は欧米に比し少なかったこともあり,その病因や治療について混乱を生じていた.ところが最近では耐糖能異常とmacroangiopathyすなわち硬化性の動脈閉塞(ASO)による壊疽の関連も明らかになってきた.本邦でも高齢化社会,食餌,生活習慣の欧米化に伴い糖尿病性閉塞性動脈硬化症による足病変患者が増加している.我々は糖尿病性腎症で透折中の患者に生じたischemic ulcer2例,眼病変の合併したmixed type1例,内服治療されていたneuropathic ulcer2例を経験した.Ischemic ulcerの2例は下肢切断後死亡.Mixed typeの1例は教育がうまくいかず,両下肢切断.Neuropathic ulcerの2例は,連日の局所処置とインスリン自己注射を通じて,糖尿病との関連やその管理の重要性を指導できた.これらの症例の病態や治療経過を通じて,我々は糖尿病教育における足管理の重要性を再認識し,今後も積極的に糖尿病教育に参加していきたいと思っている.

著者関連情報
© 1999 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top