日本皮膚科学会雑誌
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掌蹠の後天性色素性母斑の形成機序―ホルマリン固定パラフィン包埋未染標本の蛍光法と同一切片のHMB-45・NKI/C-3免疫染色による検討―
斉藤 夕美森嶋 隆文森嶋 智津子原 弘之
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1999 年 109 巻 6 号 p. 865-

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抄録

本研究の目的は,1.掌蹠の後天性色素性母斑を単純黒子型(LS),境界母斑型(JN),複合母斑型(CN),真皮内母斑型(IN)に分類し,各組織型の10%燐酸緩衝ホルマリン液固定パラフィン包埋未染標本(未染標本)の蛍光法的特徴を明らかにすること,2.未染標本と同一の切片にHMB-45(HMB),NKI/C-3(NKI)免疫染色を施し,進展過程の母斑細胞の蛍光とHMB,NKI染色性との相関を検討すること,3.これら所見を踏まえて母斑病巣の形成過程を解明することである.〔披験症例〕足底罹患例が102検体,手掌が16検体,小児が44検体,成人74検体,計118検体である.病理組織学的にはLSは38検体,JN46検体,CN29検体,IN5検体である.〔結果〕1)母斑の形成過程:LSでは基底層に密に,ときに有棘層内に散在して緑色~黄緑色蛍光を発し,HMB,NKIともに陽性の樹枝状細胞が個別性に増生し,JNとの移行型では樹枝状細胞は基底層~有棘層下1/3に集簇し,多くは境界部活性形成に参与し,1部は経表皮性に排除される.主病巣が胞巣形成であるJNでは個別性樹枝状細胞の数が減じ,弱い緑色蛍光,HMB弱陽性~陰性,NKI陽性の円形細胞(母斑細胞)が主体となり,境界部活性はエクリン汗管円錐部にも形成される.上記性状の樹枝状細胞は境界母斑形成前段階の分化不十分な母斑細胞,換言すればdendritic neuvus cellあるいはnevomelanocyteであると考えたい.境界部の蛍光性母斑細胞はやがて真皮内に滴落しCNに移行する,INでは真皮内母斑細胞巣は全体にNKI陽性,A型母斑細胞は蛍光を発するがHMBは陰性である.2)高位の樹枝状細胞と母斑細胞巣の経表皮性排除:基底層上方の表皮内の樹枝状細胞はLS32%,JN50%,CN41%と高頻度に認められ,角層内では細胞形態が失われている.母斑細胞巣の経表皮性排除はJNの20%,CNの10%にみられ,これは表皮内の大型な母斑細胞巣の上部が角層内で壊死に陥った結果と考えたい.3)汗管円錐部の樹枝状細胞と境界部活性:汗管円錐部の樹状枝細胞の個別性増生は全組織型で高頻度にみられ,境界部活性はJN,CNの約60%にみられた.母斑細胞の真皮内滴落にエクリン汗管は主要経路の1つと考えられた.病理組織学的にエクリン中心性母斑はCNの21%にみられた.

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© 1999 日本皮膚科学会
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