日本皮膚科学会雑誌
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109 巻, 6 号
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  • 清水 宏
    1999 年 109 巻 6 号 p. 853-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    1990年代に入り,分子生物学的研究手法の導入により,表皮水疱症(EB:epidermolysis bullosa)の原因遺伝子が次々に解明された.重症型のEBは特定の表皮基底膜タンパクのfunctionalノックアウトhumanであることが判明し,各タンパクのヒト皮膚における役割までもが見事に明らかにされた.また30以上の亜型に分類されていたEBの多くは,実は同じ遺伝子の異なった変異パターンの表現型であることも判明し,genotype/phenotype correlation(遺伝型・表現形の相関関係)が明らかとなりつつある.さらに筋ジストロフィー症や幽門閉鎖症を合併する新しいEB病型の原因遺伝子も同定され,これらは偶然の合併でなく,単一遺伝子病であることも明らかにされた.これらの基礎的研究の進歩と平行し,各家系特有の遺伝子変異を同定することも可能となり,重症型EBに対してはDNAレベルでの出生前診断も臨床導入されるに至っている.
  • 斉藤 夕美, 森嶋 隆文, 森嶋 智津子, 原 弘之
    1999 年 109 巻 6 号 p. 865-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    本研究の目的は,1.掌蹠の後天性色素性母斑を単純黒子型(LS),境界母斑型(JN),複合母斑型(CN),真皮内母斑型(IN)に分類し,各組織型の10%燐酸緩衝ホルマリン液固定パラフィン包埋未染標本(未染標本)の蛍光法的特徴を明らかにすること,2.未染標本と同一の切片にHMB-45(HMB),NKI/C-3(NKI)免疫染色を施し,進展過程の母斑細胞の蛍光とHMB,NKI染色性との相関を検討すること,3.これら所見を踏まえて母斑病巣の形成過程を解明することである.〔披験症例〕足底罹患例が102検体,手掌が16検体,小児が44検体,成人74検体,計118検体である.病理組織学的にはLSは38検体,JN46検体,CN29検体,IN5検体である.〔結果〕1)母斑の形成過程:LSでは基底層に密に,ときに有棘層内に散在して緑色~黄緑色蛍光を発し,HMB,NKIともに陽性の樹枝状細胞が個別性に増生し,JNとの移行型では樹枝状細胞は基底層~有棘層下1/3に集簇し,多くは境界部活性形成に参与し,1部は経表皮性に排除される.主病巣が胞巣形成であるJNでは個別性樹枝状細胞の数が減じ,弱い緑色蛍光,HMB弱陽性~陰性,NKI陽性の円形細胞(母斑細胞)が主体となり,境界部活性はエクリン汗管円錐部にも形成される.上記性状の樹枝状細胞は境界母斑形成前段階の分化不十分な母斑細胞,換言すればdendritic neuvus cellあるいはnevomelanocyteであると考えたい.境界部の蛍光性母斑細胞はやがて真皮内に滴落しCNに移行する,INでは真皮内母斑細胞巣は全体にNKI陽性,A型母斑細胞は蛍光を発するがHMBは陰性である.2)高位の樹枝状細胞と母斑細胞巣の経表皮性排除:基底層上方の表皮内の樹枝状細胞はLS32%,JN50%,CN41%と高頻度に認められ,角層内では細胞形態が失われている.母斑細胞巣の経表皮性排除はJNの20%,CNの10%にみられ,これは表皮内の大型な母斑細胞巣の上部が角層内で壊死に陥った結果と考えたい.3)汗管円錐部の樹枝状細胞と境界部活性:汗管円錐部の樹状枝細胞の個別性増生は全組織型で高頻度にみられ,境界部活性はJN,CNの約60%にみられた.母斑細胞の真皮内滴落にエクリン汗管は主要経路の1つと考えられた.病理組織学的にエクリン中心性母斑はCNの21%にみられた.
  • 古城 八寿子, 城野 昌義, 中川 敬一, 小野 友道
    1999 年 109 巻 6 号 p. 875-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    Vibrio uulnificus感染症は,肝硬変などの基礎疾患を有する患者が,夏に,生の魚介類摂取後や,汽水中で創部から感染する日和見感染症である.数日以内に敗血症性ショックと壊死性筋膜炎をきたし,急激な経過をたどる.初期治療が予後を大きく左右し,救命の可否は初診医の認識の有無に大きく関わる.著者らは10例を経験し,2例のみを救命し得た.我々は,1997年までの本邦報告93例(自験例を含む)を集計することにより,日本における本症の疫学と臨床像の特徴を明らかにした.経口感染によるものが多く,患者の70%が死亡しているが,特に発病後3日未満の死亡率は38.5%と高く,全死亡者の半数以上に当たるため,初期の的確な診断と,抗生剤の早期投与やdebridementが重要である.そこで,本症の診断と治療の指針となり得るフローチャートの作成を試みた.
  • 辻 淳子
    1999 年 109 巻 6 号 p. 885-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    横浜市立大学医学部付属病院において1995から1998年に経験したGVHD12例の皮疹部組織におけるTNF-α,TNF receptor,Fas,Fas ligandの発現を分子生物学的,免疫組織化学的に検討した.まず,reverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)法を用いて,GVHDの皮疹部組織におけるTNF-α,TNF receptor,Fas,Fas ligandのmRNAの発現を観察したところ,TNF receptor,FaSのmRNA発現は健常皮膚と比較して有意に増強していた.これに対し,TNF-α,Fas ligandは健常皮膚と比較して同程度であった.これらの結果は免疫組織化学的所見と矛盾せず,GVHD皮疹部では,TNF/TNF receptorとFas/Fas ligandを介する系が皮膚GVHDのapoptosis誘導に重要な役割をはたしているものと考えられた.
  • 幸田 太, 古江 増隆, 桐生 美麿
    1999 年 109 巻 6 号 p. 893-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    症例は13歳の女性.初診の1年ほど前に右側頭部の拇指頭大の円形皮疹に気付いた.肉眼的には中央が黒掲色調でやや隆起し,周辺が赤褐色の標的様外観を呈していた.病理組織学的には,真皮膠原綿維間に裂隙状の管腔が多数認められ,内腔に突出する傾向のあるやや大型の内皮細胞が増殖していた.また病変全体に出血とヘモジデリンの沈着を伴っていた.臨床的および病理組織学的にtargetoid hemosiderotic hemangiomaと診断した.
  • 飯塚 崇志, 大島 歩, 中林 淳浩, 清 佳浩, 滝内 石夫, 保格 宏務, 藤本 司
    1999 年 109 巻 6 号 p. 899-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    症例:43歳女性.初診の2年前より頭皮に黒色結節が多発してきた.病理組織学的に,これらは基底細胞癌であった.頭部CTにて大脳鎌の石灰化を認めたため,本症例を基底細胞母斑症候群と診断した.他の症状として,手掌の小陥凹,表皮嚢腫,両眼隔離,傍矢状洞部の髄膜腫が認められた.基底細胞母斑症候群において,放射線は基底細胞癌の発生を誘発する因子の一つと考えられており,髄膜腫の手術のため,頭部に対し頻回のX線検査を受けたことが,基底細胞癌を誘発した可能性も考えられた.
  • 垣内 千恵, 川島 眞
    1999 年 109 巻 6 号 p. 905-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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    水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid;BP)では,基底膜のヘミデスモソームのBP抗原(BP180)に自己抗体が結合することによって水疱形成を引き起こすと考えられている.このBP180は表皮細胞の基底膜側に偏在することから,細胞膜の裏打ち構造との関連が予想されるが,両者の関連については解析されていない.本研究ではBP180の主要なエピトープに相当するペプチドに対する抗体と,抗βフォドリン抗体を用いて,水疱と水疱辺縁の紅斑を含むBP皮疹部及び正常皮膚の免疫組織学的検索を行なった.BP180ペプチド抗原は正常皮膚では染色されなかったが,BP皮疹部の水疱蓋と水疱辺縁の紅斑部の表皮基底層で染色された.一方,βフォドリンはBP皮疹部の水疱とその辺縁の紅斑部の表皮基底細胞の基底膜側では染色されなかった.これらのことから,水疱と辺縁の紅斑を含むBP皮疹部におけるβフォドリンの部分的消失は,BP180を介する細胞―基質間接着の制御異常をもたらし,水疱形成の病態に関与している可能性が示唆された.
  • 1999 年 109 巻 6 号 p. 911-
    発行日: 1999年
    公開日: 2014/08/19
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