日本皮膚科学会雑誌
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線状皮膚エリテマトーデス(linear cutaneous lupus erythematosus)―Blaschko線との関連―
安部 正敏石川 治五十嵐 直弥
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2000 年 110 巻 5 号 p. 861-

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抄録

線状皮膚エリテマトーデス(linear cutaneous lupus erythematosus)の1例を報告し,これまでに当教室で経験した本症3例,および過去に報告され本症に合致すると思われた7例と併せ,本症の疾患概念とその特徴を考察した.本症の皮疹は通常の円板状エリテマトーデスの様に類円型ではなく線状の紅斑であるため,その臨床症状のみからの診断は困難である.しかし,本症は,病理組織学的に円板状エリテマトーデスに一致する点で確定診断が可能であり,その非定型的な臨床像から皮膚エリテマトーデスの1亜型と考えられる.本当に合致すると考えられた11例について検討すると,発症年齢は3歳から48歳に及び,うち7例が15歳以下の発症であり小児例が多数を占めた.性差は男4例,女7例と若干女性に多かった.皮疹出現部位は8例が顔面,ほか上肢,上肢と胸部,下肢がそれぞれ1例であり,うち7例は皮疹がBlaschko線に沿って認められた.臨床検査所見において,明らかな免疫学的異常を認めた例は1例のみであった.しかし,それもごく軽度の異常であり,全例全身性エリテマトーデスへの移行を示唆する所見はみられなかった.本症の発症要因は不明であるが,皮疹がBlaschko線に沿うことが多いことから,本症の発症に皮膚モザイクが関与する可能性が考えられ,エリテマトーデス皮疹発症機序を考える上で興味深い疾患であると考えられる.治療に関しては,自験例4例についてDiaphenylsulfone(DDS)療法が有効であり,本症に試みられるべき有力な治療手段であると思われた.

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