抄録
潰瘍性大腸炎(UC)の治療のために受けた大腸亜全摘術後に,ストーマ周囲より壊疽生膿皮症(PG)を発症した35歳,女性例を報告する.患者は25歳時より,UCの診断にて薬物治療を受けていた.35歳時,第2子出産後UC治療の中断による腹部症状の悪化ならびに貧血の進行のため,大腸亜全摘術ならびに回腸瘻造設術を受けた.術後2週目より回腸瘻周囲に紅斑が出現し,腹部手術創,IVH施行部などにも潰瘍形成を伴い,急速に拡大した.複数回の細菌培養は陰性であり,特徴的臨床像,血液学的所見ならびに生検組織像より1970年にMountainが報告したperistomalPGと診断した.皮疹ならびに血液学的所見を含む全身症状はステロイド剤の全身投与によりすみやかに改善した.Peristomal PGの英文報告は7報告(31例)であり,本邦においても消化器科領域にて3報告(4症例)の文献報告をみるのみで極めて稀なPGのvariantである.その発生機序は不明であるものの,ストーマ装具による接触皮膚炎や術後感染症と考えられて報告されていない可能性もあり,同様症例に対する注意の喚起を目的とすると共に考察を加え症例報告した.