1994年1~12月の1年間に,新潟大学医学部附属病院皮膚科を受診したアトピー性皮膚炎(AD)患者110例の湿潤病巣の細菌培養を施行した.289検体から20種,583株の細菌が分離された.全例から黄色ブドウ球菌が検出され,同時分離菌としてβ溶血を示す連鎖球菌(溶連菌)が35例から検出された.内訳はA群溶連菌6例,B群溶連菌14例,G群溶連菌20例で,5例からは溶連菌が2群検出された.月別の比較では,1,7,8月の検体数が多く,検出率は1月と7月に高かった.G群は検出率の高い月に多く検出され,流行が示唆された.女性例が男性例の1.5倍あったが,溶連菌の検出率に男女差は無かった.年齢別では,15~29歳の年齢層からの症例数が74.3%を占めた.ステロイド剤外用中の症例の溶連菌の検出率は14.0%であったが,ステロイド外用剤を使用していない症例は50.9%と高率であった.溶連菌が検出されたADは,検出されなかったADに比べて血清IgE値と末梢血の好酸球の比率(%)が統計的に有意に高値で,LDHは高い傾向にあった.皮疹の特徴から痂皮性膿痂疹,カポジー水痘様発疹症様皮疹,湿潤性湿疹病変の3つの臨床型に分類し,それぞれ8例,6例,21例から検出された.治療はペニシリン系抗生剤を投与しなくても除菌できた症例が14例中10例あったものの,皮疹の改善と感染後後遺症の予防のためペニシリン系抗生剤の14日間の全身投与が必要と考えられた.以上,15歳以上でステロイド外用剤の不使用症例や,血清IgE値高値,好酸球増多,LDH高値で,ADとして重症な症例から溶連菌が多く検出され,湿潤性湿疹病変から検出されることが多いことから,流行時には細菌培養を励行し,湿疹病変に適切な治療を行い,皮疹の改善を得ることが重要であると考えられた.
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