2001 年 111 巻 7 号 p. 1075-1081
C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus,HCV)感染が多彩な皮膚疾患に関連することが注目されている.そこで,HCV陽性患者220名を実際に診察し,皮膚症状との関連を統計的に検討した.また,クリオグロブリン血症性紫斑,扁平苔癬の病変組織について免疫組織染色を行いHCVの局在を検討した.皮膚症状の出現は151例で認め,69%であった.皮膚症状を認めた群では,認めない群と比較し,平均年齢,HCV陽性と診断されてからの年数,ZTT値が有意に高く,肝炎の慢性化が皮膚症状の発生に関連する事が示唆された.個々の皮膚疾患については,輸血からの年数が長い症例,すなわちHCV感染の期間が長い症例のほうが皮膚症状を認めやすい傾向があり,中でも,何らかの免疫機序が関与して生じたと考えられる慢性蕁麻疹,扁平苔癬,クリオグロブリン血症性紫斑の3疾患20症例については統計的に有意であった.血管の変化が主体である手掌紅斑,くも状血管腫,紙幣状皮膚の出現率はこれまでに報告があるアルコール性肝障害と比べ低い割合であった.HCVの局在についての検討では,クリオグロブリン血症性紫斑の1例で陽性所見を認めたが,使用した抗体やエピトープの問題があり明確な局在の証明には至らなかった.CVが病変部に存在するかは今後の検討を待ちたい.