本研究では,寝たきり患者の舌を臨床および真菌学的(直接鏡検と培養)に検討した.対象は,済生会川口総合病院に入院または通院中の寝たきり患者56例である.培地としてchloramphenicolを加えたサブロー・ブドウ糖寒天平板培地を用い,滅菌綿棒で舌を擦過し,培地に塗沫し培養した.直接鏡検陽性は56例中25例(44.6%)と高値であった.また,陰性31例のうち19例でカンジダ属を分離(
Candida albicans 17例)した.舌の臨床所見(自覚症状,白苔,発赤および萎縮),患者の状態を示す因子(①基礎疾患,②臨床検査成績,③治療薬,④栄養摂取法,⑤寝たきり期間,⑥ADL,⑦Braden scale,⑧褥瘡の有無,⑨検査1カ月後の予後)で直接鏡検陽性率を比較した.直接鏡検陽性率は,臨床症状では,自覚症状のある症例,はがれやすい白苔のある症例,発赤のある症例で高く,患者側の因子では,結核患者,寝たきり期間1カ月以内の患者で高かった.一方,臨床検査成績,治療薬,栄養摂取法,ADL,Braden scale,褥瘡の有無,予後では有意差はなかった.
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