日本皮膚科学会雑誌
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原著
脳出血後の麻痺肢に生じた脈管肉腫(Stewart-Treves症候群)の1例
高井 利浩藤川 義明村田 洋三熊野 公子
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2003 年 113 巻 3 号 p. 295-299

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抄録

脳出血後の麻痺肢に脈管肉腫が発生した症例を経験した.症例は73歳,女性.12年前に脳出血を発症,その後左完全片麻痺となった.屈曲拘縮した左上肢に4年前から浮腫をきたし,初診の5カ月前より左上腕伸側に暗赤色斑が出現,増大した.病理組織像で真皮内にび漫性に異形細胞が増殖し,不規則な脈管腔の形成も伴っていた.脈管肉腫と診断し,左肩関節離断を施行するも肺転移と播種性血管内凝固症候群のため術後5カ月で死亡した.慢性のリンパ浮腫の肢に生じたことからStewart-Treves症候群と診断した.本症は,乳癌や子宮癌の治療後をはじめとする,さまざまな成因によるリンパ浮腫肢上での発生の報告がある.脳出血等の脳血管障害後の浮腫肢も脈管肉腫を発生しうるとの認識が必要と考えた.

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© 2003 日本皮膚科学会
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