2005 年 115 巻 4 号 p. 585-589
52歳女性,37歳時(1988年)に左乳癌のため根治手術を受けた.術後は左上肢に高度の浮腫が残存していたが,2002年9月左前腕に紫斑が出現し,徐々に腫瘤を形成した.同年12月前医を受診しStewart-Treves syndromeの診断を受けインターロイキン-2の局所注射および切除,植皮術を施行された.しかし,術後まもなく局所再発を来たし,2003年2月に当院を紹介受診した.当院初診時,左前腕には植皮内に最大40 mm大の暗紫色腫瘤が数個存在した.画像診断による評価では上腕皮下にも不整形腫瘤を指摘されたが他臓器への明らかな転移は認めなかった.そこでMesna,Doxorubicin,Ifosfamide,Dacarbazineを併用した化学療法(MAID療法)を施行した.この方法を約1カ月間隔で3コース施行したところ腫瘍は著明に縮小した.有害反応として骨髄抑制,特に白血球減少は毎回grade 3以上であり,G-CSFを要した.その他,ヘモグロビン減少,血小板減少,肝酵素上昇など軽度認めた.Ifosfamide使用時に注意が必要である出血性膀胱炎は頻回の尿検査を施行していたが出現しなかった.