日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
原著
グロムス腫瘍の臨床および病理組織学的検討―粘液沈着とCD34発現の関連について―
大内 健嗣永尾 圭介石河 晃向井 萬起男西川 武二
著者情報
ジャーナル 認証あり

2005 年 115 巻 7 号 p. 1001-1010

詳細
抄録

グロムス腫瘍は多彩な病理組織像をとるが,種々な程度に,間質に粘液沈着を伴うことが知られている.今回,過去27年間に慶應義塾大学皮膚科において経験したグロムス腫瘍33症例,34検体を集計し,Enzinger,Andrewらの提唱した診断基準を用いて組織型を分類し,臨床的事項,粘液沈着,免疫組織染色態度との関連を比較検討した.その結果,グロムス腫瘍にはH-E染色上,34例中19例に粘液沈着が認められた.中等度から高度の粘液沈着を来した9例は全例solid typeであった.粘液沈着が確認されない症例についても,アルシアンブルー(pH 2.5)染色により15例中,14例において,腫瘍間質への粘液沈着が認められ,本症はもともと粘液を産生する能力があることが示唆された.H-E染色上,粘液沈着を伴う症例はCD34陽性かつfactor-VIII陰性であった(P<0.005,n=19).罹患期間の平均は7.7年であったが罹病期間と粘液沈着の関連は認められず,粘液沈着は必ずしも経年変化ではないことが示唆された.また,爪甲下のものに粘液沈着が多い傾向にあった.グロムス腫瘍の組織型の多様性は,グロムス細胞の分化の方向と関連しており,粘液沈着も二次的な変化ではなく,線維芽細胞への分化方向を示す主要な所見であると思われた.

著者関連情報
© 2005 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top