日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
115 巻, 7 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
皮膚科セミナリウム 第3回 皮膚の細菌感染症
  • 多田 讓治
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第3回 皮膚の細菌感染症
    2005 年 115 巻 7 号 p. 977-984
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    皮膚感染防御の観点から,常在菌叢はその最前線のバリアを担っており,皮脂膜という限られた環境の中で生存しつつ,病原菌からの防御壁として選ばれた細菌群と言える.一方では,免疫不全状態の患者が増加している今日,常在菌による日和見感染症も重要な問題となっている.常在菌叢の感染防御機序とともに皮膚細菌感染症の起炎菌として最も多い黄色ブドウ球菌に関する感染機序についてもさらなる検討が必要である.
  • 日野 治子
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第3回 皮膚の細菌感染症
    2005 年 115 巻 7 号 p. 985-994
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    皮膚の細菌感染症はあまりに多彩で,しかも日常診療で関わらざるを得ない疾患群である.ここでは浅在性細菌感染症では最も日常的な膿痂疹,深在性ではガス壊疽,全身性では一時期少なくなったと言われたが決して減少していない溶連菌感染症,特にかつて猩紅熱といわれた病態を中心に,知っておくほうがよい臨床症状を述べた.
  • 石井 則久
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第3回 皮膚の細菌感染症
    2005 年 115 巻 7 号 p. 995-999
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    皮膚科で診療する抗酸菌症は皮膚結核,ハンセン病,非結核性抗酸菌症である.症例数が少ないために診断が遅れたり,誤診したりするケースがある.また治療が遅れると病変が拡大したり,治癒が遷延したり,後遺症を残すこともある.治療は薬剤感受性検査すると共に多剤で治療する.確実な内服を行い,早期治癒に心がけ,耐性菌を出さない.
原著
  • 大内 健嗣, 永尾 圭介, 石河 晃, 向井 萬起男, 西川 武二
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 7 号 p. 1001-1010
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    グロムス腫瘍は多彩な病理組織像をとるが,種々な程度に,間質に粘液沈着を伴うことが知られている.今回,過去27年間に慶應義塾大学皮膚科において経験したグロムス腫瘍33症例,34検体を集計し,Enzinger,Andrewらの提唱した診断基準を用いて組織型を分類し,臨床的事項,粘液沈着,免疫組織染色態度との関連を比較検討した.その結果,グロムス腫瘍にはH-E染色上,34例中19例に粘液沈着が認められた.中等度から高度の粘液沈着を来した9例は全例solid typeであった.粘液沈着が確認されない症例についても,アルシアンブルー(pH 2.5)染色により15例中,14例において,腫瘍間質への粘液沈着が認められ,本症はもともと粘液を産生する能力があることが示唆された.H-E染色上,粘液沈着を伴う症例はCD34陽性かつfactor-VIII陰性であった(P<0.005,n=19).罹患期間の平均は7.7年であったが罹病期間と粘液沈着の関連は認められず,粘液沈着は必ずしも経年変化ではないことが示唆された.また,爪甲下のものに粘液沈着が多い傾向にあった.グロムス腫瘍の組織型の多様性は,グロムス細胞の分化の方向と関連しており,粘液沈着も二次的な変化ではなく,線維芽細胞への分化方向を示す主要な所見であると思われた.
  • 田中 稔彦, 北野 文朗, 桐谷 麻美子, 亀好 良一, 羅 智靖, 秀 道広
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 7 号 p. 1011-1016
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    68歳,女性.3年前より膨疹と激しい痒みの出没が持続し,ヒスタミンH1受容体拮抗薬とコルチコステロイド内服薬を投与されるも効果がなく,痒みのために著しくQOLが障害され抑うつ的となっていた.自己血清の皮内反応で陽性反応を示し,健常人由来の末梢血好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験の結果から,高親和性IgE受容体分子に対する自己抗体による自己免疫性蕁麻疹と診断した.シクロスポリンを投与し,速やかに皮疹は消退した.患者血清中の健常人好塩基球に対するヒスタミン遊離活性を経時的に測定したところ,ヒスタミン遊離活性は症状の消長と連動し,治療により症状が完全に消失した後は数カ月かけてゆっくりと低下していった.シクロスポリンは皮膚マスト細胞に直接作用してヒスタミン遊離を抑制するだけでなく,自己抗体の産生を抑制することによって蕁麻疹の病勢を制御する可能性が考えられた.
  • 長橋 和矢, 増澤 幹男, 冨田 昌宏, 前田 亜希子, 浜田 祐子, 勝岡 憲生, 西口 郁, 原 英則, 後藤 尚美, 内藤 静夫
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 7 号 p. 1017-1022
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    頭部血管肉腫69歳男性例の治療経過を報告し,併発した血胸に対する放射線療法と,抗腫瘍剤Docetaxelの胸腔内投与の有効性について述べた.放射線療法は従来の全肺野照射に加え,血胸の原因として想定される胸膜病巣に対し胸壁の接線方向に高エネルギー照射を行い奏功した.Docetaxelの胸腔内投与は再発した血胸に対して施行し,呼吸状態の改善と延命効果がみられた.本例の血胸に対するこれらの積極的治療法は初の試みであり,全身への影響は軽微であることから末期状態でも選択肢となりえる有効な治療法と考えた.
  • 小沢 桂, 菊池 智, 折笠 玲子, 柳堀 浩克, 尾山 徳孝, 金子 史男, 長谷川 隆哉, 神山 修
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 7 号 p. 1023-1028
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    症例1,11カ月男児.生後2カ月から左下腿に単発性の褐色斑が出現した.症例2,10カ月男児.生後2カ月から体幹に小褐色斑が出現し,徐々に増数してきた.症例3,56歳男.数年前から体幹に小褐色斑が多数出現した.皮膚病変部の組織検査にて3例ともにトルイジンブルー染色で異染性を示す細胞の浸潤を認め,肥満細胞症と診断した.皮疹部組織を検体としたc-kit遺伝子変異の検索では,全例において816番目のアミノ酸でアスパラギン酸(GAC)からバリン(GTC)への点突然変異(Asp816Val)を認めた.この点突然変異は成人例では検出されるが小児例ではほとんど見つかっておらず,今回3症例すべてにおいてAsp816Valを認めたことは興味深い.今後の臨床経過の慎重な観察と,同様な遺伝子変異を持った症例の解析が必要である.
  • 榎並 寿男
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 7 号 p. 1029-1034
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    308 nm monochromatic excimer light(以下308 MEL)は308 nmの波長だけを放出する新型塩化キセノンランプで,イタリアではこれを使って難治性皮膚疾患に有効性を見出した報告が散見されるが本邦においては報告がない.今回我々は15年間,種々の治療に抵抗した25歳・女性の左上腕部の難治性尋常性白斑に対して,narrow-band UVB(NBUVB)あるいはNBUVBとカルシポトリオール軟膏との併用療法を行い有効性を見出せなかったが,この308 MEL療法を行い有効性を得たので報告する.この療法は従来の光線療法で有効性の乏しい場合,試みてもよいターゲット療法であると考えた.
  • 岸本 和裕
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 7 号 p. 1035-1040
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    抗真菌剤を内服できない爪真菌症患者に対する有効な局所療法の一つとして,爪甲研磨術が知られている.本法を日常診療において短時間かつ有効に行うため,使用器具や削爪の飛散防止に工夫を加えた.また,本法が爪真菌症の治療効果のみならず,患者のQOL向上に与える貢献度を施術直後の満足度調査で確認した.最新式の電動歯削用器械は,コンパクトな本体,ブラシレスモーターが採用されているモーターハンドピース,踏込み式フットコントローラーが特徴で,高性能で扱いやすく,術者の負担を軽減し,精密な施術に適していた.多種類の先端部を使い分けることにより削爪の仕上がりをより一層美しくすることができるが,大型球状で粗目な先端部1本のみでも交換時間を大幅に削減できる上に整容的にも十分満足のいく仕上がりを得た.簡易型の技工作業用ボックスを改良することにより,十分な作業スペースと視界を保持したまま削爪粉の飛散防止が可能であった.計146例(69.8±16.7歳)の爪真菌症患者のうち回答が得られた88例を対象とした施術直後の患者満足度調査では,半数以上の患者(27/47例中,57.5%)が軽度以上の痛みを感じていたが,大部分の症例(78/88例中,88.6%)で満足感が得られた.以上より,爪真菌症患者に対する爪甲研磨術は,少ないスペースで短時間に確実な施術が可能であり,その高い満足度からも難治性爪真菌症に対して有効な補助療法の一つと思われる.
学会抄録
feedback
Top