日本皮膚科学会雑誌
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原著
難治性爪真菌症に対する歯科用ドリルを用いた爪甲研磨術の改良に関する検討
岸本 和裕
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ジャーナル 認証あり

2005 年 115 巻 7 号 p. 1035-1040

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抄録

抗真菌剤を内服できない爪真菌症患者に対する有効な局所療法の一つとして,爪甲研磨術が知られている.本法を日常診療において短時間かつ有効に行うため,使用器具や削爪の飛散防止に工夫を加えた.また,本法が爪真菌症の治療効果のみならず,患者のQOL向上に与える貢献度を施術直後の満足度調査で確認した.最新式の電動歯削用器械は,コンパクトな本体,ブラシレスモーターが採用されているモーターハンドピース,踏込み式フットコントローラーが特徴で,高性能で扱いやすく,術者の負担を軽減し,精密な施術に適していた.多種類の先端部を使い分けることにより削爪の仕上がりをより一層美しくすることができるが,大型球状で粗目な先端部1本のみでも交換時間を大幅に削減できる上に整容的にも十分満足のいく仕上がりを得た.簡易型の技工作業用ボックスを改良することにより,十分な作業スペースと視界を保持したまま削爪粉の飛散防止が可能であった.計146例(69.8±16.7歳)の爪真菌症患者のうち回答が得られた88例を対象とした施術直後の患者満足度調査では,半数以上の患者(27/47例中,57.5%)が軽度以上の痛みを感じていたが,大部分の症例(78/88例中,88.6%)で満足感が得られた.以上より,爪真菌症患者に対する爪甲研磨術は,少ないスペースで短時間に確実な施術が可能であり,その高い満足度からも難治性爪真菌症に対して有効な補助療法の一つと思われる.

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© 2005 日本皮膚科学会
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