2006 年 116 巻 12 号 p. 1777-1783
シンガポールより帰国した6歳男児のケルスス禿瘡を経験した.頭頂部と右側頭部に境界不明瞭な不完全脱毛巣を認めたが,病変内にblack dotはみられなかった.病毛の直接鏡検で毛内性大胞子菌性寄生を確認,原因菌は真菌学的検査所見およびDNA診断でTrichophyton(T)tonsuransと同定.治療はテルビナフィン1日62.5 mgの内服を開始し13週で治癒,再発はなかった.近年,格闘技選手間のT. tonsuransの集団感染が問題になっており,報告も多い.本邦のT. tonsuransによる頭部白癬およびケルスス禿瘡の報告例から,真菌学的特徴について検討した.