抄録
アトピー性皮膚炎患者の皮疹部は痒み過敏状態にあり,ヒスタミンの皮内投与によって生じる痒みは,ヒスタミンへの感受性が低い患者の無疹部と比べて,非常に強い.この強い痒みに対して通常投与量の抗ヒスタミン薬が有効であるかを検討するため,アトピー性皮膚炎患者10名でイオントフォレーシス法によるヒスタミンの皮内投与を施行し,塩酸エピナスチン20 mg錠1錠内服による反応抑制効果を見た.その結果,患者の皮疹部では無疹部よりも痒み,紅斑,膨疹の全てが強く生じたが,そのすべてが塩酸エピナスチン内服30分後にはプラセボと比較して有意に抑制され,内服3時間後にはほぼ完全に抑制された.このことは痒み過敏状態下で増強するヒスタミン誘発性そう痒に対しても通常投与量の抗ヒスタミン薬が十分に有効であることを示す.しかし,現実には抗ヒスタミン薬の内服3時間後でもアトピー性皮膚炎患者が痒みを頻繁に感じることを考慮すると,アトピー性皮膚炎の痒みにはヒスタミン以外の物質が深く関与していることも同時に示唆している.