日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
原著
右第IV趾に生じたonychomatricomaの1例
浅野 雅之橋本 彰奥山 隆平相場 節也
著者情報
ジャーナル 認証あり

2009 年 119 巻 12 号 p. 2355-2358

詳細
抄録
1992年にBaran & Kintによって報告された,爪母由来のonychomatricomaの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告した.症例は41歳の男性であった.10年前より右第IV趾の爪が黒く,厚くなっているのを自覚した.趾背部皮膚が赤くなり,軽度の自発痛を伴うようになったため皮膚科を受診した.爪甲は全体に黄色調に肥厚し,黒色調の縦走する線条と先端には散在性の点状出血を伴っていた.後爪郭には軽度の紅斑と腫脹がみられた.爪白癬を疑い検鏡したが,真菌要素は確認できなかった.爪部の腫瘍性病変を疑い,局所麻酔下に抜爪を行った.爪母に多数の指状の突起を有する弾性硬で淡紫赤調の腫瘍があり,抜爪した爪甲にはその突起と噛み合う様に多数の空洞が形成されていた.病理組織検査の結果,腫瘍は,乳頭状に肥厚する爪上皮を有し,間質は多数の紡錘形細胞と繊細な膠原線維から形成されていた.一方,爪甲には遠位端に漿液性の液体を有する多数の空洞と,顆粒層を経ずに上皮細胞が爪甲を形成する像があった.
著者関連情報
© 2009 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top