日本皮膚科学会雑誌
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原著
手背の壊疽性膿皮症様病変が先行し,多彩な臨床像を呈した好中球性皮膚症の1例
綿貫(工藤) 沙織宮本 樹里亜石橋 正史陳 科榮
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2010 年 120 巻 14 号 p. 3103-3108

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抄録

72歳,男性.3週間前より,両手背の自覚症状を伴わない,一部びらん・潰瘍を伴う紅斑局面が出現し,当科を受診した.発症7週間後,手背の紅斑局面は壊疽性膿皮症様病変を呈した.両下肢にもびらんと痂皮を形成する紅斑が多発し,紫斑性丘疹,膿疱を伴う毛囊炎様皮疹も認めた.また手掌・足底に掌蹠膿疱症様皮疹も合併した.手背の紅斑局面と下腿の紅斑の病理組織学的所見では真皮膠原線維の融解像を伴い,真皮全層に稠密な好中球浸潤像を呈した.下腿の紫斑性丘疹は真皮浅層の血管を中心とした血管炎の所見を呈した.Minocycline 200 mg/日内服,ステロイド軟膏外用等で全ての皮疹は瘢痕を残さずに治癒した.自験例は両手背の潰瘍性紅斑局面と下腿の紅斑局面,紫斑性丘疹,毛囊炎様皮疹,掌蹠膿疱症様皮疹などの多彩な好中球性皮膚症の皮疹を伴い,表皮及び真皮における好中球浸潤のパターンが多様であったためと考えた.手背の非定型抗酸菌症にも類似した病変から発症した自験例のように,好中球性皮膚症は時に多彩な臨床像を呈し,診断に注意を要する.

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© 2010 日本皮膚科学会
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