日本皮膚科学会雑誌
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原著
大腿部のリンパ浮腫を契機に診断に至ったリンパ脈管筋腫症の1例
小林 律子中野 敏明濱本 貴子佐藤 佳代子瀬山 邦明衛藤 光
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2012 年 122 巻 8 号 p. 2085-2090

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抄録
44歳,女性.左大腿部に消長を繰り返す腫脹を自覚し,徐々に増悪した.左大腿内側を中心に潮紅を伴う浮腫が存在し,皮膚生検組織では真皮内にリンパ管の増生と拡張を認めた.CTにて肺内に多発する薄壁嚢胞と腹部と骨盤内に嚢腫状の腫瘤影を認め,リンパ脈管筋腫症(Lymphangioleiomyomatosis,以下LAM)と臨床的に診断した.呼吸器症状や腹部症状は認めなかった.LAMは遺伝子変異に基づいた平滑筋様のLAM細胞が増殖,リンパ管の増生を促し,更にはリンパ管を介して遠隔部位に転移する腫瘍性疾患である.生殖可能年齢の女性に多く発症し,肺,および体軸リンパ節を中心とした縦隔や骨盤腔に病変を形成する.進行すると呼吸不全をきたし,肺移植適応疾患と認定されている.多くは呼吸器症状で発症し,リンパ浮腫を初発症状とする報告は稀である.本例ではリンパ浮腫を契機に診断に至り,早期に保存的治療を開始し,症状の軽快を認めた.皮膚科医が早期診断に貢献し得る全身性疾患として稀ではあるが知っておくべき疾患と考えた.
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© 2012 日本皮膚科学会
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