遺伝性疾患の診療における遺伝カウンセリングの役割をまとめた.東京医大皮膚科遺伝外来の症例をまとめたところ,レックリングハウゼン病が最も多数をしめた.そこで,レックリングハウゼン病を中心に最近の話題と遺伝カウンセリングの問題点を述べた.レックリングハウゼン病の遺伝カウンセリングでは診断が問題になることが多い.すなわち,乳幼児期では症状はカフェ・オ・レ斑のみで神経線維腫は見られない.しかし,時期が来れば症状がそろうので,過剰に反応せず経過をみてゆく.分節型(NF5)と遅発型(NF7)は遺伝的モザイクと考えられている.モザイクの場合でも,次世代に遺伝子変異が遺伝することがあり,遺伝すれば児はレックリングハウゼン病になる.60歳,男性の遅発型の例を提示した.この例の血液細胞を用いて遺伝子検索を行ったところ,NF1遺伝子のエクソン55の前後に欠失(c.del7808-8053)を認めた.しかし,遺伝子変異が血液細胞中でモザイクの状態で存在しているか,他の組織でも遺伝子変異がみられるかは不明であった.レックリングハウゼン病の遺伝カウンセリングにおいて,モザイクの問題は今後重要になってくるものと考える.レックリングハウゼン病の症状は多彩で,多くの科が関係する.そのため,患者全体をみて,適宜,適切な科に紹介するコーディネイターが必要である.このような意識を持つ医師を増やし,人材を育成する必要がある.遺伝カウンセリングは,遺伝性疾患を持ちながらも充実した人生を送るための支援のひとつである.
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